SIGLENT(シグレント)SDS5000X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

ブラシレスDCモーターは、ブラシと整流子がない直流モーターのことです。ブラシ付きDCモーターと異なり、電流の切り替えを電子回路(インバーター回路)で行うのが大きな特徴です。これにより、ブラシと整流子の摩擦による摩耗や電気ノイズをなくし、効率的で長寿命な動作が可能になります。

 

仕組み

 

ブラシレスDCモーターは、主に以下の3つの要素で構成されています。

  • ローター(回転子): 永久磁石でできており、回転する部分です。

  • ステーター(固定子): 複数のコイルでできており、モーターの外側に固定されています。

  • 駆動回路(ドライバー): 半導体スイッチ(トランジスタ)などで構成され、ステーターのコイルに流す電流の向きを電子的に切り替える役割を担います。

この駆動回路が、モーター内部にあるセンサー(ホールセンサーなど)によって永久磁石の位置を検知し、適切なタイミングで各コイルに電流を流します。これにより、ステーターのコイルが電磁石となって磁界を発生させ、ローターの永久磁石を反発・吸引することで回転させ続けます。

 

特徴

 

 

メリット

 

  • 長寿命・メンテナンスフリー: ブラシと整流子の物理的な摩耗がないため、ブラシ付きモーターに比べて寿命が非常に長く、定期的なメンテナンスが不要です。

  • 高効率・省エネルギー: 機械的な摩擦がないためエネルギーロスが少なく、高い効率で動作します。

  • 静音・低ノイズ: ブラシと整流子の接触による電気的な火花(スパーク)や騒音が発生しません。

  • 高精度な制御: 電子回路による電流制御のため、回転速度やトルクを細かく調整でき、低速から高速まで安定した運転が可能です。

 

デメリット

 

  • コストが高い: 駆動回路が必要なため、ブラシ付きモーターに比べて構造が複雑で、コストが高くなる傾向があります。


 

種類と用途

 

ブラシレスDCモーターは、ローターとステーターの配置によって大きく2つの種類に分けられます。

  • インナーローター型: 内側に永久磁石のローター、外側にコイルのステーターを配置するタイプ。ローターの慣性モーメントが小さいため、応答性が良く、きめ細かな制御が求められる用途に適しています。

  • アウターローター型: 内側にコイルのステーター、外側に永久磁石のローターを配置するタイプ。慣性モーメントが大きいため、安定した回転が求められる用途に適しています。

その優れた特性から、以下のような様々な分野で広く活用されています。

  • 家電製品: エアコン、洗濯機、扇風機、掃除機など

  • PC関連: ハードディスクドライブ、冷却ファン

  • 産業機器: ロボット、ドローン、電動工具

  • 自動車: 電動パワーステアリング、燃料ポンプ、ハイブリッド車のモーター

 

 

ブラシレスDCモーターは、その構造上、コイルに電流を流すことで磁界を発生させ、ローターの永久磁石と相互作用して回転します。このコイルの性質が誘導性と密接に関わっています。

 

誘導性の特徴

 

  • インダクタンス: ブラシレスDCモーターのコイルはインダクタンスという特性を持ちます。インダクタンスとは、電流の変化を妨げようとする性質のことで、電流が流れると磁界が発生し、電流が変化するとその磁界も変化するため、電圧が生じます。

  • 遅れ: 誘導性の特徴として、電圧に対して電流が遅れるという性質があります。これは、コイルに電圧を印加しても、インダクタンスの働きによって電流がすぐに最大値まで上がらず、徐々に増加していくためです。

  • 交流駆動: ブラシレスDCモーターは、直流電源で駆動しますが、コイルの通電を電子的に切り替える(電子整流)ことで、実質的には交流をコイルに流しています。この交流によって発生する回転磁界が、誘導性の影響を大きく受けます。

  • 高周波駆動: 制御のためにPWM(パルス幅変調)などの高周波スイッチングが行われることが多く、この高周波によって誘導性の影響が顕著になります。例えば、高周波の電圧リップルは、インダクタンスによって電流リップルに変換され、これが鉄損(渦電流損など)の増加につながる可能性があります。

  • トルク変動: 誘導性の影響は、モーターのトルク特性にも現れます。電流の立ち上がりが遅れるため、制御が適切でないとトルクがスムーズに発生せず、トルクリップル(トルクの脈動)の原因となることがあります。これを防ぐために、適切な駆動回路や制御アルゴリズムが必要です。

 

ブラシレスDCモーターは誘導性負荷です。

これは、モーターのコイルがインダクターとして機能するためです。モーターのコイルは、電流が流れると磁場を生成し、この磁場の変化が誘導起電力を生み出します。この誘導起電力は、電流の変化を妨げる方向に働くため、電気的には誘導性負荷として扱われます。


 

ブラシレスDCモーターの主な構成要素

 

ブラシレスDCモーター(BLDC)は、主に以下の3つの主要な部品で構成されています。

  • ステーター: 固定子であり、コイルが巻かれています。電流が流れると電磁石になります。

  • ローター: 回転子であり、永久磁石が取り付けられています。

  • ホールセンサー(またはエンコーダー): ローターの位置を検出するためのセンサーです。この情報に基づいて、どのコイルに電流を流すかを制御します。


 

誘導性負荷が制御に与える影響

 

ブラシレスDCモーターを駆動する際には、この誘導性負荷の特性を考慮する必要があります。

  1. 駆動回路の設計: 誘導性負荷に電流を流すと、急激な電流変化によって高電圧の誘導起電力が発生することがあります。このため、駆動回路(インバーターやMOSFETなど)は、この電圧スパイクに耐えられるように設計する必要があります。

  2. 電流制御: 誘導性負荷は、電流が電圧に比べて遅れて流れるという特性(遅れ力率)を持ちます。そのため、モーターの効率的な制御には、電流を正確に制御するPWM (Pulse Width Modulation)制御が不可欠です。

このように、ブラシレスDCモーターは、その構造上、コイルのインダクタンスが重要な役割を果たすため、誘導性負荷に分類されます。

 

SIGLENT(シグレント)SDS5000X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

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