入力保護回路(Input Protection Circuitry)とは

~測定機器の入力端子や内部回路を過電圧・過電流から保護する回路~


■ 定義

入力保護回路(Input Protection Circuitry)とは、測定機器の入力端子に異常な高電圧や過大な電流が加わった際に、内部の精密回路を損傷から守るために設計された保護機構です。
特にデジタルマルチメータ(DMM)、オシロスコープ、LCRメーター、CV測定器など、入力端子が外部信号に直接接する装置では不可欠な安全設計要素です。


■ 主な役割

保護対象 内容
✅ 過電圧保護 定格以上の電圧が加わった際にクランプ動作で保護(例:TVSダイオード)
✅ 過電流保護 高電流が流れた際に電流を制限(例:ヒューズ、保護抵抗、リレー)
✅ 静電気(ESD)対策 人体からの放電による高電圧パルスから入力回路を保護
✅ 逆接続保護 電源の極性が逆になった場合の損傷防止(例:ショットキーダイオード)

■ 代表的な回路構成例

構成要素 機能例
✅ TVSダイオード(過電圧クランプ) 一定以上の電圧で導通し、内部への高電圧侵入を阻止
✅ シリーズ抵抗(入力制限) 瞬時の電流制限とインパルス吸収
✅ PTCリセットヒューズ 異常時に抵抗値が上がり、自己復帰する過電流保護素子
✅ メカニカルリレー 過大信号検出時に回路を物理的に遮断
✅ MOSFET/トランジスタ スマート保護(ソフトスタート、逆接制御)用

■ 製品別:入力保護の実装例

測定器 保護内容 備考
✅ DMM 1000V CAT II / 600V CAT III 入力保護 安全規格(IEC61010)に準拠
✅ オシロスコープ ±400Vピーク入力保護(1MΩ端子) アッテネータ付きプローブ使用推奨
✅ LCRメーター ±50V以下の入力電圧制限 DCバイアス印加時の注意が必要
✅ CV特性測定器 ±100V印加対応、過電流遮断回路搭載 デバイス破壊を未然に防止

■ 注意点:入力保護があっても限界はある

入力保護回路は事故や誤接続の一次的な防止策であり、継続的な過電圧/過電流には耐えられない場合があります。
そのため、下記のような運用上の対策も重要です:

  • 使用前に測定対象の電圧範囲を確認

  • 適切なアッテネータやプローブを使用

  • 安全規格に準拠した製品を選定

  • 保護ヒューズの定期点検/交換


■ まとめ

項目 内容
定義 測定器内部を過電圧・過電流・ESDから保護する安全回路
代表部品 TVSダイオード、抵抗、リレー、ヒューズ、MOSFET等
重要性 装置の長寿命化・修理コスト削減・作業者の安全確保
適用機器 DMM、オシロスコープ、LCRメーター、CVアナライザ等
制限事項 短時間・軽度の異常に対応、過酷な条件では破損リスクあり

T&Mコーポレーションでは、高信頼性の入力保護回路を備えた各種測定機器をご紹介しております。
安全規格への対応や、測定対象に応じた入力保護設計の選定支援も可能です。どうぞお気軽にご相談ください。