危険電圧


危険電圧の基本定義

電圧区分 危険電圧基準 主な規格・根拠
安全電圧(SELV) AC30Vrms以下、DC60V以下 IEC 61010, IEC 60950, IEC 60601, PSEなど
危険電圧(Hazardous Voltage) AC30Vrms超、DC60V超 同上
高電圧(High Voltage) AC1000Vrms超、DC1500V超 高電圧試験規格など
  • 危険電圧の定義はIEC、各国法規、安全規格でほぼ共通

  • 人体への感電・火災リスク・機器破損リスクを基準に区分


なぜ AC30V / DC60V が基準なのか

  • 乾燥した皮膚状態で人体インピーダンスを考慮
    (おおむね500~10kΩ程度を想定)

  • 心室細動・筋肉収縮・離脱困難になる閾値が、この電圧付近から顕著化する


測定器における危険電圧の扱い

A. 測定対象の危険電圧

  • 測定対象がAC30V / DC60Vを超える場合 → 測定器側で安全対策が必要

  • 特にAC100V系、産業用DC電源、インバータ回路などは常に危険電圧域

B. 測定器設計側の安全対策

対策項目 内容
入力絶縁 測定端子と筐体・電源系統を絶縁
過電圧保護 TVS、MOV、サージアブソーバによる瞬時高電圧保護
内部絶縁バリア クリアランス、沿面距離、絶縁材
誤挿入保護 電流端子での電圧誤測定時の保護設計
ヒューズ保護 過電流遮断による内部破損防止

C. 測定器規格における危険電圧の扱い

規格 内容
IEC 61010-1 試験・測定・制御機器の安全規格
IEC 61010-2-030 多機能測定器用追加規格
IEC 61010-2-033 手持ち式DMM用追加規格
IEC 61010-2-032 電流クランプ用規格

現場使用上の危険電圧の注意点

シチュエーション 注意すること
AC100V電源回路測定 接続ミスによる感電・短絡事故防止
インバータ回路測定 高dv/dtによる絶縁破壊・浮遊電圧に注意
DC高圧測定 電源オフ後も残留電荷がある場合あり
オシロスコープ使用 GND端子の接続位置に注意(接地ショート事故多発領域)
任意波形発生器 出力端子が筐体アースと導通している場合に注意

危険電圧と測定器の安全レベル分類

測定器分類 危険電圧への対応
一般据置DMM 測定入力は危険電圧にも耐える絶縁設計
ハンディDMM バッテリー駆動で筐体浮遊 → 感電リスク低減
ベンチオシロスコープ 入力端子は筐体アース直結 → 接地管理が重要
絶縁型オシロスコープ 測定端子・チャネル・筐体アース間を完全絶縁
アイソレーションアンプ 入出力間ガルバニック絶縁、危険電圧に非常に強い

危険電圧下での測定の基本原則

  • ① 接続前の電位確認(フローティング vs 接地)

  • ② 専用プローブ(差動プローブ・高圧プローブ)使用

  • ③ CAT規格適合機器使用

  • ④ 測定対象の放電確認

  • ⑤ 測定後の残留電圧確認


まとめ

危険電圧は AC30Vrms超または DC60V超が国際基準。
測定器はこの危険電圧に対応する絶縁・保護設計が義務付けられている。
使用者は正しい接続、機器選定、安全作業手順を守ることが必要。

✅ 最後に: Micsig SigOFIT 光ファイバー絶縁プローブ(MOIPシリーズ)の簡単な紹介

  1. レーザー給電の光アイソレーション方式により、プローブヘッドとオシロスコープを完全に絶縁

  2. 帯域幅100 MHz~1 GHz(モデルにより選択可能)

  3. ゼロドリフト & 高精度:DCゲイン精度±1%、ノイズ≦0.45 mV rms

  4. CMRR(コモンモード除去比) 最大180 dB(DC)、100 MHzで128 dB、1 GHzで108 dB

  5. 高耐圧:コモンモード最大60–85 kVpk

  6. 交換可能なアッテネーターチップ(±1V~±6250Vまで対応、OP20~OP5000)

  7. 入力容量  が非常に低く、GaN/SiCなどの超高速スイッチング回路に最適

  8. AutoZero完了が1秒以下で、短いウォームアップ後すぐに高精度測定可能

  9. BNC出力対応で、幅広いオシロスコープへの接続が可能

  10. 用途例:SiC・GaNパワーデバイス、高電圧スイッチング、モータードライブ、インバータなど