差動プローブとは

 

**差動プローブ(Differential Probe)**とは、2つの測定点間の電圧差を測定するためのオシロスコープ用プローブです。通常のパッシブプローブとは異なり、基準となるグラウンド(接地)を必要とせず、フローティング状態の信号や高電位差のあるポイント同士の測定に適しています。


なぜ差動プローブが必要なのか?

一般的なプローブは一端をグラウンドに接続する必要があるため、グラウンドが共通でない回路の測定には不向きです。無理に接続すると、ショートや誤動作の原因になります。

差動プローブは、入力の2点間の電位差のみを測定する構造になっているため、次のような用途に最適です。


差動プローブの主な用途

用途
フローティング信号の測定 AC電源の中点やインバータ回路の出力
スイッチング電源やモーター駆動 高dv/dtによるノイズの多い信号
差動信号の観測 RS-485、CAN、LVDSなどの通信信号
電源リップル測定 GNDに依存しない精密測定が可能

差動プローブの構造と動作原理

差動プローブは、入力端子+(正側)と-(負側)から信号を取り込み、その差分(=V+ - V-)のみを増幅・出力します。
これにより、共通のノイズ成分(コモンモード信号)を除去できる点が大きな特徴です。


主な仕様と選定ポイント

項目 内容
帯域幅 数十MHz~数GHz。測定対象の周波数に応じて選定。
差動測定範囲 ±数十V〜数百V。測定信号の最大振幅に注意。
共通モード除去比(CMRR) 高いほどノイズ耐性が高い(dB表記)。
絶縁耐圧 高電圧回路を扱う場合は重要な指標。

使用時の注意点

  • 測定対象と帯域・電圧範囲が一致しているか確認

  • 正しい補正(キャリブレーション)を実施

  • プローブの先端ケーブルを必要以上に広げない(ノイズや精度低下の原因)


差動プローブとパッシブプローブの違い

項目 差動プローブ パッシブプローブ
測定対象 2点間の電位差 信号とGND間の電圧
グラウンド接続 不要 必須
主な用途 フローティング信号、差動信号 一般的な回路
ノイズ耐性 高い(CMRRによる) 低い(ノイズの影響を受けやすい)

まとめ

差動プローブは、**「GNDを共有できない測定」や「ノイズの多い環境での精密測定」**に欠かせないツールです。適切に選定・使用することで、安全かつ高精度な電圧差の測定が可能になります。