
狭域通信(DSRC)とは、Dedicated Short Range Communicationの略で、「専用狭域通信」と訳されます。車両と道路に設置された路側機の間で、数メートルから数十メートルという狭い範囲で大容量の情報を瞬時にやり取りする双方向の無線通信方式です。
ETC(自動料金収受システム)をはじめとするITS(高度道路交通システム)の中心的な技術の一つとして開発されました。
仕組みと特徴
DSRCは、主に5.8GHz帯の電波を使用し、路側に設置された**路側機(アンテナ)と、車両に搭載された車載器(車載器)**の間で通信を行います。
項目 | 詳細 |
通信範囲 | 数メートル〜数十メートルと非常に狭い |
通信速度 | 高速伝送が可能(最大4Mbps程度) |
双方向通信 | データの送受信を同時に行える |
セキュリティ | 暗号化やデータ認証機能により、高い安全性を確保 |
この「狭い範囲で高速通信できる」という特性により、走行中の車両と特定の場所(料金所、駐車場、サービスエリアなど)との間で、正確かつ効率的な情報通信が可能になります。
主な用途
DSRCは、主に以下のような分野で活用されています。
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ETC(自動料金収受システム):有料道路の料金所で車両を停止させることなく、自動的に料金の支払いを完了させます。これがDSRCの最も代表的な活用例です。
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ITSスポットサービス(旧称:DSRCサービス):高速道路や道の駅などに設置された「ITSスポット」から、渋滞情報、事故情報、画像付きの観光情報などをリアルタイムで受信できます。
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駐車場・ガソリンスタンド:入出庫管理や料金決済を自動で行うシステムにも応用されています。
参考:ETC
- 5.8GHz帯:ETCの通信は、5.8GHz帯の電波を使用します。
- DSRC:DSRCは、短距離無線通信技術の一種で、ETCの通信に特化した形で利用されています。
- ARIB STD-T75:DSRCの規格は、ARIB STD-T75で規定されています。
- 周波数帯域:5.8GHz帯の中でも、下りは5775MHz~5805MHz、上りは5815MHz~5845MHzの7チャンネルが割り当てられています。
- 占有帯域幅:1つのチャンネルの占有帯域幅は4.4MHzです。
- 変調方式:ETCでは、ASK(振幅偏移変調)が用いられます。また、DSRC-VICSなどの他の用途では、π/4 QPSK(直角位相偏移変調)も使用されます。
- 通信方式:ETCの通信は、路側機(料金所のアンテナ)と車載器の間で双方向に行われます。
- 電波の強度:通信が行われるエリアでは、電界強度を測定することで、意図した場所に電波が届いているかを確認できます。
- スプリアス:ETC車載器から不要な電波(スプリアス)が出ている場合、2022年以降、電波法違反になる可能性があります。
- 2022年問題/2030年問題:2022年問題は、スプリアスに関するもので、2030年問題は、セキュリティ規格の変更によるものです。
近年では、DSRCの技術をさらに発展させたV2X通信(Vehicle-to-Everything)の研究も進められており、C-V2X(携帯電話網を利用)との比較検討も行われています。
T&MコーポレーションではNEXTEM社と協調してSIGLENT社、Ceyear社の電子計測器(スペアナ, VSG, VNA等)によるDSRCの評価に必要な電子測定器、システムの提案を行っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご相談くださいませ。
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