誘電率関連の基礎知識

■ 誘電率とは?

誘電率(Permittivity)とは、物質が電場にさらされたときに電気的に極化(分極)しやすい性質を表す物理量です。
単位は [F/m](ファラッド毎メートル)で、記号は「ε」で表されます。


■ 相対誘電率(εr)

相対誘電率とは、その物質の誘電率を**真空の誘電率(ε₀)**で割った値で、次の式で表されます。

εr=εε0ε_r = \frac{ε}{ε_0}

  • ε₀(真空の誘電率):8.854×10⁻¹² F/m

  • ε(絶対誘電率):物質ごとの誘電率

相対誘電率は無次元量で、一般的に1より大きい値をとります。


■ 静的誘電率と複素誘電率

● 静的誘電率(Static Permittivity)

低周波または直流条件下での誘電率。コンデンサの容量計算などに使用されます。

● 複素誘電率(Complex Permittivity)

交流電場下での物質の応答は、エネルギーの蓄積と損失を伴うため、次のように表されます。

ε∗=ε′−jε′′ε^* = ε' - jε''

  • ε'(実部):エネルギーの蓄積を表す成分

  • ε''(虚部):誘電損失(エネルギーの散逸)を表す成分


■ 誘電正接(tanδ)

複素誘電率において、損失の大きさを示す指標が**誘電正接(tanδ)**です。

tan⁡δ=ε′′ε′\tan δ = \frac{ε''}{ε'}

tanδが大きいほど、エネルギー損失が大きいことを意味します。コンデンサや絶縁材料の評価において重要です。


■ 周波数と温度の影響

誘電率は次のような外的条件によって変動します:

条件 影響
周波数 高周波になると誘電率は減少傾向。分子の応答が追従しにくくなるため。
温度 一般的に温度上昇で誘電率は増加傾向。分子運動が活発になるため。

このような特性を理解することで、高周波回路やセラミック材料設計における適切な選定が可能になります。


■ 誘電率測定の代表的手法

測定方法 特徴 使用機器例
容量法(平行板法) 静的誘電率の測定に適する LCRメータ、インピーダンスアナライザ
共振法 高精度な高周波領域の測定 VNA + 共振器
Sパラメータ法 高周波の複素誘電率測定に使用 ベクトルネットワークアナライザ(VNA)

■ 関連するT&M取扱製品

  • SIGLENT SNA5000A / SVA1000Xシリーズ
     → 高周波材料の複素誘電率をSパラメータから算出

  • TECHMIZE TH510 CV / TH1920シリーズ
     → 材料や電子部品の静的誘電率を容量計測から評価

  • TECHMIZE TH199X SMU
     → 微小電流を精密に測定し、分極・リーク特性を評価


■ 誘電率の応用例

  • 電子部品設計:高誘電率材料は小型大容量のコンデンサに使われます。

  • 通信機器:PCBの基板材料選定において、伝送特性や損失に直結。

  • レーダー/医療イメージング:異なる誘電率による反射を利用した画像化。


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