θr、θd、Δ%、巻線比とは
~トランスやコイルの性能・異常を見極めるための基本パラメータ~
■ θr(位相遅れ角 / 位相差リファレンス)
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読み方:シータ・アール
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定義:トランス入力信号と出力信号との基準となる位相差角度(reference phase angle)。
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用途:正常な巻線構造での**目標位相角(理想値)**として用いられ、比較判定の基準となります。
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単位:度(°)
■ θd(実測位相差)
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読み方:シータ・ディー
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定義:実際の試験で測定された入出力間の位相差。
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用途:θrと比較することで、巻線の極性間違い、結線ミス、リーケージの変化などを判定可能。
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単位:度(°)
■ Δ%(デルタパーセント)
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定義:θrとθdの差異を百分率で表した値(変化率)。
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式:
Δ%=(∣θd−θr∣θr)×100Δ\% = \left( \frac{|\theta_d - \theta_r|}{\theta_r} \right) \times 100
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用途:量産検査や信頼性試験での合否判定基準として活用される。
一般的にΔ%が一定以上を超えると「不良(異常位相)」と判定。
■ 巻線比(ターン比 / Turns Ratio)
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定義:トランスの一次巻線と二次巻線の巻数比、またはそれに対応する電圧比。
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式:
巻線比=N1N2=V1V2\text{巻線比} = \frac{N_1}{N_2} = \frac{V_1}{V_2}
※理想トランスでは、巻数比=電圧比。ただし実際は損失・結合係数の影響あり。
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用途:
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設計値とのズレチェック(±%の誤差)
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巻線方向(極性)や構造不良の検出
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高周波トランスや信号トランスの電圧変換確認
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単位:比率(例:1:1、10:1 など)または百分率(%)
■ まとめ表
用語 | 意味 | 単位 | 主な用途 |
---|---|---|---|
θr | 基準位相角(理想値) | ° | 正常品の参考基準として記録される |
θd | 実測位相角 | ° | 測定値。θrと比較して異常判定 |
Δ% | 位相差変化率 | % | θrとθdのズレ量を定量評価。不良判定に使用 |
巻線比 | 入出力巻数または電圧の比率 | –(または%) | トランス設計通りの電圧変換がされているか確認する |
■ T&Mでの測定対応
T&Mコーポレーションが提供するトランステストシステムでは、これらのパラメータを:
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✅ 多チャンネルで高速自動測定
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✅ θr基準を記憶して良否判定(Δ%比較)
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✅ ターン比測定&位相チェックを同時実行
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✅ 極性反転・巻数ミスの自動検出
といった機能でサポートしております。