SIGLENT (シグレント)スペクトル&ベクトル・ネットワーク・アナライザ SVA1000Xシリーズ

放熱器とEMC対策は、電子機器の設計において両立させるべき重要な課題です。放熱器は機器内部の熱を外部に逃がすための部品ですが、その構造によっては電磁ノイズの発生源となったり、外部からのノイズの影響を受けやすくなったりすることがあります。

 

なぜ放熱器がEMC対策と関連するのか

 

  • 電磁ノイズの発生:

    • ファンを使用する強制空冷の場合、ファンのモーターがノイズを発生させることがあります。

    • 大きな金属部品である放熱器自体が、アンテナとなってノイズを放射したり、外部からのノイズを受信したりする可能性があります。

  • 筐体の開口部:

    • 放熱器を設置するために筐体に開口部を設ける場合、その開口部から電磁ノイズが漏洩したり、侵入したりする可能性があります。

 

放熱器とEMC対策を両立させるためのアプローチ

 

  1. シールド効果のある放熱器の使用:

    • シールドケース一体型: 放熱器と電磁波シールドケースを一体化した製品があります。これにより、熱を逃がしつつ、ノイズの漏洩・侵入を防ぐことができます。

    • シールド筐体との連携: アルミダイキャストや金属筐体、シャーシなど、シールド効果の高い筐体と放熱器を熱的に密着させることで、放熱とシールドの両立を図ります。

  2. 開口部の対策:

    • パンチングメタル・金網: 放熱用の開口部には、パンチングメタルや金網を使用し、開口部のサイズを小さく、数を多くすることでシールド効果を維持しながら通気性を確保します。穴の直径が小さいほど、また板厚が厚いほどシールド効果は高まります。

    • 導電性ガスケット: 筐体の合わせ目や放熱器の取り付け部に導電性ガスケットを使用することで、隙間からのノイズ漏洩を防ぎます。

  3. 熱伝導・シールド材料の活用:

    • 熱伝導性樹脂: 熱伝導率の高い特殊な樹脂を使用することで、放熱性と電磁波シールド性を両立したハウジングやケースを作成することができます。これは、金属に比べて軽量化も期待できます。

    • 電磁波吸収シート: ノイズを熱に変換して吸収するシートを、ノイズ発生源や筐体の内側に貼り付けて対策します。

    • シールド付き熱伝導シート: 熱伝導シートの中間に金属シールド層を設けた製品もあります。これを電源レールに接続することで、ノイズをアースに戻しつつ、熱を放熱器に伝えることができます。

  4. ファン対策(強制空冷の場合):

    • ノイズフィルタ: ファンの電源ラインにLCフィルタなどを挿入し、モーターから発生する伝導ノイズを抑制します。

    • ファンモーターの選定: ノイズの少ないモーターやファンを選定することも重要です。

これらの対策を組み合わせることで、高機能化・小型化が進む電子機器において、放熱性能を確保しつつ、EMC規制をクリアすることが可能になります。