インパルス巻線試験(Impulse Winding Test)とは
~高電圧インパルスにより巻線絶縁の欠陥を非破壊で検出する手法~
■ 定義
インパルス巻線試験(Impulse Winding Test, IWT)とは、トランスやモーター、リレー、コイルなどの巻線部品に高速高電圧インパルス波形を印加し、その応答波形を解析することで、巻線の絶縁異常・層間ショート・断線などの欠陥を非破壊で検出する試験手法です。
主に出荷検査や受入検査における品質保証・不良品スクリーニングに広く使用されます。
■ 試験の原理
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被試験巻線に数百V~数kVの急峻なインパルス電圧(例えば 1.2/50μs)を加える
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巻線の構造や絶縁状態に応じた応答波形(オシロスコープ波形)を取得
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リファレンス(良品)との波形比較により異常を判定
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波形の減衰速度、共振周波数、歪み、位相シフトなどを解析
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■ 主な検出対象
異常内容 | 検出例 |
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✅ 層間ショート | 波形の立ち上がりが速くなり共振減衰 |
✅ ターン間ショート | 高調波成分変化、波形歪み |
✅ 断線 | 応答波形の極端な変化、立ち下がり変形 |
✅ 不均一巻線 | 波形の細かな変形やノイズとして現れる |
■ 試験波形のイメージ例
■ 測定パラメータの例(製品仕様による)
項目 | 内容 |
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インパルス電圧 | 100V ~ 5000V(設定可能) |
パルス立ち上がり時間 | 数十~数百ns(高速) |
試験周波数 | 10Hz ~ 数百Hz(連続試験可能) |
サンプリングレート | 100MHz以上(高精度波形解析) |
波形比較方式 | 差分演算/マッチング係数/AI判定など |
■ 用途・アプリケーション
分野 | 具体例 |
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✅ トランス製造 | 小型電源トランス、高周波トランスの層間絶縁検査 |
✅ モーター製造 | ステーター巻線・ローター巻線の工程内検査 |
✅ 車載部品 | 点火コイルやEVドライブモーターの絶縁検査 |
✅ 受入検査 | 協力工場からの巻線部品受け入れ品質検証 |
✅ 研究開発 | 絶縁構造設計時の信頼性評価 |
■ メリットと特長
特長 | 内容 |
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✅ 非破壊・高速 | 組立済み製品でも1秒未満で検査可能 |
✅ 波形比較による高感度判定 | 微細な異常も波形差異として検出可能 |
✅ 量産向け自動化対応 | PLC制御、ハンドラー連携が容易 |
✅ 信頼性向上 | 目視や簡易絶縁テストでは検出困難な異常を補完 |
■ まとめ
項目 | 内容 |
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定義 | 巻線部品に高電圧インパルスを加え、その応答波形を解析して異常を検出する非破壊試験 |
対象 | トランス、モーター、リレー、コイル等の巻線構造 |
主な欠陥 | 層間ショート、断線、巻線不均一など |
利点 | 非破壊、高速、波形ベースでの高感度スクリーニング |
T&M対応製品 | 自動化対応可能なインパルス巻線試験装置を複数取り扱い中 |
T&Mコーポレーションでは、国内外のインパルス巻線試験装置をラインナップしており、手動タイプから自動検査ライン対応モデルまで提案可能です。
波形比較アルゴリズムや測定条件の最適化に関しても技術サポートいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。