インピーダンス・アナライザとは
~周波数に応じた複雑な電気的特性を高精度に可視化する測定器~
■ 概要
インピーダンス・アナライザとは、電子部品や材料、回路の交流インピーダンス(Z)を周波数ごとに測定・解析する専用装置です。
LCRメーターよりも広範囲かつ高精度な測定が可能で、数 Hz ~ 数 GHzの範囲での特性評価に対応する高機能モデルも存在します。
■ 測定対象と用途
分野 | 主な用途 |
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電子部品 | コンデンサ・インダクタ・フェライト部品の広帯域特性測定(例:ESR, Q) |
半導体デバイス | MOSFETやダイオードのCiss, Coss, Crssの周波数特性評価 |
センサーデバイス | 静電容量型・圧電型センサーの電気応答の解析 |
電池・電解質 | EIS(電気化学インピーダンス法)によるインピーダンススペクトル取得 |
材料評価 | 誘電体、磁性体、導電性高分子の周波数応答特性評価 |
■ 測定パラメータ
項目 | 内容 |
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インピーダンス(Z) | 周波数とともに変化する電気的な“複素抵抗”を測定(単位:Ω) |
位相角(θ) | 電圧と電流の位相差を測定。リアクタンスの性質を示す指標 |
R・L・C | インピーダンスから換算された抵抗・インダクタンス・容量値 |
R: 実部、X: 虚部、Q: 品質係数、D: 損失係数 など |
■ LCRメーターとの違い
項目 | インピーダンス・アナライザ | LCRメーター |
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周波数範囲 | 広い(数 Hz~数 GHz) | 一般的に数 Hz~数 MHz程度 |
測定精度 | 高い(位相精度・分解能) | 標準的 |
用途 | 材料評価、EIS、広帯域部品解析など | 一般的な部品測定・選別など |
表示解析 | ベクトル表示、ボード線図、ニクイスト線図などが可能 | 数値出力が中心 |
■ 使用するポイント
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✅ 測定対象のインピーダンスレンジと周波数レンジを確認(例:10 mΩ~1 GΩ、1 Hz~1 GHzなど)
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✅ 電極構造や治具との整合性が重要(材料評価では専用セルやプローブが必要)
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✅ 周波数依存性がある素子や材料の研究に最適
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✅ 測定結果をベクトルとして解析できるため、回路モデル化にも有効
■ アプリケーション(用途例)
● パッシブコンポーネントの評価
コンデンサ、インダクタ、磁性コア、抵抗器、圧電素子、トランス、チップ部品、ネットワーク素子などに対して、インピーダンス特性・ESR・Q値・周波数依存性を評価。
部品選別、設計検証、故障解析に広く活用されます。
● 半導体コンポーネントの特性解析
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LEDドライバICの寄生容量・インダクタンスの抽出
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バラクタダイオードのC–V特性および電圧依存性評価
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トランジスタや集積回路の入力/出力インピーダンス、ミラー容量などの寄生パラメータ評価
● その他の電子コンポーネント
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プリント基板の伝送インピーダンス解析
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リレー・スイッチ・コネクタ・ケーブルの交流特性評価
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バッテリ内部インピーダンスの周波数依存特性(EIS)取得による劣化診断
● 誘電体材料の評価
プラスチック、セラミックス、高分子膜などの材料に対し、誘電率(ε’)・誘電損失(tanδ)・周波数応答を非破壊で測定。
センサ材料、パッケージ材、コンデンサ用誘電体の研究開発に不可欠です。
● 磁性材料の評価
フェライト、アモルファス材、ナノ結晶合金などの磁性材料に対し、複素透磁率(μ’・μ”)や磁気損失を評価。
トランスやノイズフィルタ用コア材料の開発・選定に適しています。
● 半導体材料の誘電・電気特性評価
半導体基板や薄膜材料に対して、誘電率、導電率(σ)、C-V特性を解析。
シリコン、SiC、GaN、酸化物半導体など、新材料の電気物性評価に最適です。
● 液晶セルの電気特性評価
液晶デバイスの誘電率、弾性定数、C-V特性などを周波数領域で測定可能。
駆動方式の設計、セル構造の最適化、材料評価に用いられます。
■ まとめ
インピーダンス・アナライザは、周波数によって変化する電気的な性質を可視化・数値化する高度な測定ツールです。
電子部品だけでなく、材料・化学・エネルギー分野まで幅広く活用されており、次世代デバイス開発や高度な品質管理に不可欠な計測機器といえます。
T&Mコーポレーションでは、測定対象・周波数・精度に応じた最適なインピーダンス・アナライザの選定および評価治具のご提案も承っております。
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