SIGLENT (シグレント)スペクトル&ベクトル・ネットワーク・アナライザ SVA1000Xシリーズ

オペアンプの復調問題について

オペアンプは、高周波の電磁ノイズ(EMI)を受けると、そのノイズを変調信号として検出し、それが直流(DC)のオフセット電圧として出力に現れることがあります。これが「復調問題」と呼ばれる現象です。EMC(電磁両立性)対策は、この復調問題を解決するための重要な課題です。

 

復調問題のメカニズム

 

  • 非線形特性: オペアンプの入力段や内部回路は、理想的な線形特性を持っていません。特に高周波領域では、この非線形性が顕著になります。

  • RF整流: オペアンプが電磁ノイズを受けると、その高周波ノイズがオペアンプ内部で整流され、DCオフセット電圧に変換されます。

  • 高周波ゲイン: オペアンプは、本来の動作帯域を超えた高周波領域でも、ある程度のゲインを持っています。このゲインが、入力ノイズを増幅し、復調を促進させることがあります。

 

EMC対策のポイント

 

復調問題を解決するためのEMC対策は、ノイズの侵入経路を遮断し、オペアンプが高周波ノイズを復調しないようにすることに焦点を当てます。

  1. ノイズの侵入経路対策

    • 入出力配線の対策:

      • シールド線: オペアンプの入出力配線は、ノイズを拾いやすいアンテナとして機能することがあります。シールド線を使用し、シールドを適切に接地することで、外部からのノイズの侵入を防ぎます。

      • コモンモードチョーク: ケーブルにコモンモードノイズが重畳している場合、コモンモードチョークを挿入することで、ノイズを抑制できます。

      • ツイストペア線: 差動信号ラインなどでは、ツイストペア線を使用することで、コモンモードノイズを低減できます。

  2. オペアンプ入力部の対策

    • ローパスフィルタ: オペアンプの入力部に、RCフィルタなどのパッシブフィルタを挿入し、高周波ノイズを減衰させます。これにより、オペアンプがノイズを復調する前にノイズをカットすることができます。

    • ダンピング抵抗: 入力部にダンピング抵抗を挿入することで、反射によるリンギングノイズの発生を抑制できます。

  3. オペアンプ周辺回路の対策

    • 電源ラインのフィルタリング: 電源ラインに乗ったノイズがオペアンプに影響を与えることがあります。電源ラインにパスコン(バイパスコンデンサ)やフェライトビーズを挿入してノイズを除去します。

    • 基板設計:

      • GNDパターンの最適化: グランドプレーンを広く取り、GNDループを小さくすることで、ノイズの影響を低減します。

      • 入出力パターンの最短化: 入出力パターンはできるだけ短くし、ノイズのピックアップを抑制します。

      • ノイズ発生源からの分離: ノイズを発生する部品(スイッチング電源など)と、ノイズに弱いオペアンプを物理的に離して配置します。

  4. 高周波に強い部品の選定

    • 高周波特性の良いオペアンプ: 高周波領域での特性が安定しており、コモンモード除去比(CMRR)が高いオペアンプを選択することで、復調問題を軽減できます。

    • 帰還回路の対策: 帰還回路に高域特性の優れた小容量のLCR部品を追加することで、高周波特性を改善し、復調を抑制する対策も有効です。

これらの対策を組み合わせることで、オペアンプの復調問題を効果的に解決し、EMC耐性を向上させることができます。具体的な対策は、回路構成やノイズ環境によって異なるため、発生しているノイズの種類(伝導ノイズ、放射ノイズなど)や周波数を特定し、最適な対策を講じることが重要です。