SIGLENT (シグレント)スペクトラム・アナライザ SSA3000X PLUSシリーズ

電子回路におけるコモン・モード (Common Mode: CM) とディファレンシャル・モード (Differential Mode: DM) は、信号やノイズの伝わり方を区別する重要な概念です。主に、2つの導体(信号線や電源線)に流れる電流の向きによって分類されます。

 

ディファレンシャル・モード (DM)

 

ディファレンシャル・モードは、正常な信号伝送のモードです。

  • 電流の向き: 2つの導体間で電流が互いに逆方向に流れます。

  • 特徴:

    • 信号電流は、一方の導体を「往路」、もう一方の導体を「帰路」として流れます。

    • このモードでは、信号そのものが伝達されます。

    • 往路と帰路の電流が逆方向のため、発生する磁界が互いに打ち消し合い、放射ノイズを低減する効果があります。

    • ディファレンシャル・モードのノイズは「ノーマル・モード・ノイズ」とも呼ばれます。これは、電源ライン間など、信号の経路と同じように発生するノイズです。

  • 対策: ディファレンシャル・モードのノイズ対策には、Xコンデンサやノーマル・モード・チョークコイルなどが使用されます。

 

コモン・モード (CM)

 

コモン・モードは、主にノイズとして扱われるモードです。

  • 電流の向き: 2つの導体間で電流が同じ方向に流れます。

  • 特徴:

    • 2本の導体から流れ出した電流が、グランド(アース)や筐体を帰路として戻ってくることで形成されます。

    • 同じ方向に流れるため、磁界が打ち消し合わず、大きなループアンテナを形成して電磁波を放射しやすくなります。

    • このため、コモン・モード・ノイズは、機器の電磁干渉 (EMI) の主な原因となります。

    • コモン・モードの電圧は、回路の基準となるグランドの電位を変動させるため、回路動作に悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 対策: コモン・モードのノイズ対策には、コモン・モード・チョークコイルやYコンデンサなどが使用されます。コモン・モード・チョークコイルは、ディファレンシャル・モードの信号には影響を与えずに、コモン・モードのノイズのみを効果的に除去できます。

 

まとめ

 

  ディファレンシャル・モード (DM) コモン・モード (CM)
電流の向き 逆方向 同一方向
主な用途 正常な信号伝送(差動信号) ノイズ(不要な信号)
ノイズの種類 ノーマル・モード・ノイズ コモン・モード・ノイズ
電流の経路 2つの導体間 導体とグランド(アース)間
主な対策部品 Xコンデンサ、ノーマル・モード・チョークコイル コモン・モード・チョークコイル、Yコンデンサ

 

この2つのモードを理解することは、電子機器のノイズ対策や電磁両立性 (EMC) 設計において非常に重要です。