
ツイストケーブル(ツイストペアケーブル)は、EMC(電磁両立性)対策として非常に効果的な配線方法です。そのノイズ抑制の原理は、主に以下の2つの効果に基づいています。
1. 外部からのノイズ(誘導ノイズ)の打ち消し効果
ツイストケーブルは、2本の信号線を互いにねじってペアにしています。この構造により、外部から飛来する電磁ノイズ(誘導ノイズ)の影響を大幅に軽減できます。
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原理: 外部からのノイズがケーブルに作用すると、各ねじり(ツイスト)ごとに逆向きの起電力が発生します。
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効果: この逆向きの起電力が互いに打ち消し合うことで、ノイズの影響が低減されます。ケーブル全体でノイズが相殺されるため、外部からの誘導ノイズに対して高い耐性を持ちます。
2. ケーブル自身から発生するノイズ(放射ノイズ)の低減効果
ツイストケーブルは、内部を流れる信号電流によって発生する電磁ノイズを抑制する効果もあります。
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原理: ケーブルを流れる電流は、周囲に磁場(磁束)を発生させます。ツイストペアの場合、往復の電流が流れるため、それぞれの線から発生する磁場の向きが逆になります。
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効果: 互いに逆向きの磁場が隣り合うことで、その磁束が弱め合い、外部に放射されるノイズが減少します。
ツイストケーブルの種類とEMC対策
ツイストケーブルには、シールドの有無によっていくつかの種類があり、それぞれEMC対策効果が異なります。
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UTP(Unshielded Twisted Pair): シールドのないツイストペアケーブルです。最も一般的で安価なタイプですが、ツイストによるノイズ抑制効果のみに依存します。比較的ノイズの少ない環境や、短距離の配線に適しています。
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STP(Shielded Twisted Pair): ツイストペアの上にシールドが施されたケーブルです。ツイストによるノイズ抑制効果に加え、シールドによって外部からの静電ノイズや電磁ノイズを遮断し、内部から発生する放射ノイズを外部に漏らさない効果があります。より高いEMC対策が求められる環境や、ノイズ源の近くでの使用に適しています。
まとめ
ツイストケーブルによるEMC対策は、以下の点を考慮して行うことが重要です。
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ツイストペアの利用: 信号線とリターン線を必ずペアでツイストして配線することで、誘導ノイズと放射ノイズの両方を抑制します。
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シールドの活用: ノイズ源が強い環境や、通信の信頼性が特に求められる場合は、シールド付きのケーブル(STP)を選定し、シールドを適切に接地することが効果的です。接地が不十分な場合、シールド効果が期待できないばかりか、かえってノイズの原因になる可能性もあります。
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撚りピッチの最適化: 撚りピッチ(ねじりの間隔)はノイズ抑制効果に影響を与えます。特定の周波数帯のノイズを抑制したい場合、撚りピッチを調整することで効果を高められることがあります。
これらの対策を組み合わせることで、システムのEMC性能を向上させることができます。