
プリント基板(PCB)におけるトラックの引き回しは、EMC(電磁両立性)対策において非常に重要な要素です。不適切な引き回しは、ノイズの発生源となったり、外部からのノイズを拾いやすくなったりする原因となります。
以下に、PCBのトラック引き回しにおけるEMC対策のポイントをいくつかご紹介します。
1. グランドプレーンの活用
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広範囲なグランドプレーンの確保: グランドプレーンは、ノイズの低減に非常に効果的です。広いグランドプレーンを設けることで、ノイズ電流が流れやすい低インピーダンスな経路を提供し、ノイズの放射を抑えることができます。
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信号リターンパスの考慮: 高速信号のトラックを引く際には、その信号のリターンパス(グランド)が最短かつ最も広い領域を通るように設計することが重要です。これにより、信号ループの面積を最小化し、放射されるノイズを低減できます。
2. トラックの引き回し方
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ループ面積の最小化: 信号のトラックとリターンパス(グランド)が作るループの面積は、できるだけ小さくする必要があります。ループ面積が大きいと、磁界ノイズを放射するアンテナとして機能しやすくなります。
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高速信号線の引き回し: 高速信号線は、他の信号線から離して配置し、クロストークを防ぐ必要があります。また、クロック信号などのノイジーな信号は、ノイズに弱い信号から遠ざけて配置します。
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直角曲がりの回避: トラックは、直角に曲がるのではなく、45度の角度で曲げるようにします。直角曲がりは、インピーダンスの不連続性を引き起こし、反射やノイズの原因となる可能性があります。
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ガードパターンの利用: ノイズを発生しやすいトラックやノイズに弱いトラックの周りに、グランドプレーンと接続されたガードパターン(保護トラック)を配置することで、ノイズの影響を軽減できます。
3. その他
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自動配線の注意点: 自動配線ツールは、必ずしもEMCに配慮した最適なレイアウトを生成するとは限りません。自動配線後は、特にノイジーな部分やデリケートな部分のトラックをマニュアルで調整することが推奨されます。
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ビア(Via)の配置: レイヤー間の接続に使うビアは、信号リターンパスの不連続性を引き起こす可能性があります。高速信号のビアの近くには、グランドビアを配置し、最短のリターンパスを確保することが望ましいです。
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デカップリングコンデンサの配置: 電源ピンの近くにデカップリングコンデンサを適切に配置し、ノイズの吸収と電源ラインの安定化を図ります。コンデンサは、できるだけICのピンの近くに配置し、配線長を短くすることが重要です。
これらの対策は、個々の設計や要件によって最適な組み合わせが異なります。シミュレーションツールや、経験則に基づいた設計ガイドラインを参考にしながら、適切な対策を講じることが大切です。