
パワー・インテグリティ(PI)とは、プリント基板上の電源ラインの電源品質を指す言葉です。近年、LSIの低電圧・大電流化や高速化が進んだことで、電源の品質が信号の品質(シグナル・インテグリティ)にも大きな影響を与えるようになり、重要な設計課題となっています。
パワー・インテグリティの重要性
現代の電子機器に不可欠なLSIは、微細化によって電源電圧が低下する一方で、動作速度の向上に伴い、瞬間的に大きな電流を消費します。このため、わずかな電圧変動でもLSIの誤動作や性能低下を引き起こす可能性があり、高品質な電源供給が不可欠となっています。
PIが悪化する主な要因としては、以下のものが挙げられます。
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IRドロップ(電圧降下):基板の配線抵抗によって電圧が降下する現象。大電流が流れると顕著になります。
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同時スイッチングノイズ(SSN):多くの回路が同時にスイッチングすることで、瞬間的に大きな電流が流れ、電源電圧にノイズが発生する現象。
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電源のインピーダンス:理想的な電源は周波数に関わらずインピーダンスが0ですが、現実には配線やコンデンサの寄生要素によりインピーダンスが発生し、電圧変動の原因となります。
パワー・インテグリティの対策
これらの問題を解決するために、設計段階から様々な対策が取られます。
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デカップリングコンデンサの最適配置:ICの近くにコンデンサを配置することで、瞬間的な電流要求に応じ、電源電圧の変動を抑えます。
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電源・GNDプレーンの活用:基板の層を電源やGND専用とすることで、配線抵抗を低減し、インピーダンスを低く保ちます。
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シミュレーション解析:設計段階で、IRドロップや電源インピーダンスなどをシミュレーションによって解析し、問題点を事前に見つけ出します。
これらの対策を適切に行うことで、電源品質を確保し、電子機器の信頼性と性能を向上させることができます。
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