
フェージング (fading) とは、電波が伝搬する際に、その信号強度が時間とともに変動する現象のことです。この現象は、受信側で信号が弱くなったり強くなったりするため、通信品質に大きな影響を与えます。
フェージングのメカニズムと種類
フェージングは、電波が複数の経路を通って受信機に到達するマルチパス伝搬によって引き起こされることが多いです。
マルチパス伝搬
電波は、送信機から受信機まで直接届く直接波だけでなく、建物や山などの障害物で反射したり、回折したりして間接的に届く反射波や回折波も存在します。これらの複数の電波が受信機で合成される際、それぞれの電波が異なる経路を通るため、位相がずれて到着します。この位相のずれによって、電波が互いに強め合ったり(建設的干渉)、打ち消し合ったり(破壊的干渉)することで、受信電力が変動します。
フェージングの主な種類
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マルチパスフェージング: 上記のマルチパス伝搬によって引き起こされるフェージングです。
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レイリーフェージング: 移動体通信などで、反射波が多数存在し、直接波がない環境で発生するフェージングです。受信信号の振幅がレイリー分布に従うことが特徴です。
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ライスフェージング: 直接波が存在し、その信号に加えて多数の反射波が存在する環境で発生するフェージングです。受信信号の振幅がライス分布に従います。
フェージングへの対策
フェージングは、無線通信において避けられない現象ですが、以下のような対策によって影響を軽減することが可能です。
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ダイバーシティ: 複数のアンテナや周波数などを利用して、フェージングの影響を抑える技術です。
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空間ダイバーシティ: 複数のアンテナを離れた位置に配置し、それぞれのアンテナで受信した信号を合成します。
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周波数ダイバーシティ: 複数の異なる周波数で同じ情報を送信します。
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誤り訂正符号: 信号の欠落や劣化が発生しても、受信側で元の情報を復元できるように、冗長な情報を付加する技術です。
これらの技術を用いることで、フェージングによる通信品質の低下を最小限に抑え、安定した無線通信を実現しています。
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