ベクトルネットワークアナライザ(Vector Network Analyzer, VNA)の性能や用途を評価するうえで重要となる指標は、以下のような項目があります。それぞれの指標がどのような測定やアプリケーションに影響するかもあわせて簡潔にまとめます。


✅ ベクトルネットワークアナライザの重要指標一覧

指標名 説明 重要性・用途
周波数範囲(Frequency Range) 測定可能な最小~最大周波数範囲 測定対象の周波数帯が含まれている必要あり(例:5G, Wi-Fi, 衛星など)
ダイナミックレンジ(Dynamic Range) ノイズフロアと最大入力信号との差(dB単位) フィルタ特性、減衰の大きいデバイス測定時に重要
トレースノイズ(Trace Noise) 測定のばらつき、安定性の指標 高精度測定にはノイズの少なさが求められる
方向性(Directivity) リフレクション測定時のポート間干渉の小ささ S11やS22測定の精度に影響
リターンロス/VSWR測定精度 反射特性をどれだけ正確に測れるか アンテナやマッチング回路の評価に不可欠
スイープ速度(Sweep Speed) 指定周波数範囲をどれだけ速く測定できるか 生産ラインや時間制限のある測定で有効
ポート数 測定できるポートの数(2ポート, 4ポートなど) 多ポートデバイス(スイッチ、マルチアンテナ)測定時に重要
出力レベル範囲 発信信号の強さ(dBm単位) 非線形素子や高感度デバイスの測定に対応
入力レベル耐性 入力可能な最大信号レベル 過大入力による損傷防止、広いダイナミックレンジの確保
校正機能 ECal(電子校正)やTOSMなど 高精度・再現性のある測定には不可欠
位相精度(Phase Accuracy) 信号の位相をどれだけ正確に測定できるか ミキサ、アンテナアレイ、干渉測定に重要
時間領域解析(TDR/TDT) 周波数データを変換し、反射の発生点を時間的に把握 ケーブル故障位置特定や故障解析に有用(オプション機能)

💡補足事項

  • 一般的なVNA測定項目は Sパラメータ(S11, S21, S12, S22) であり、上記の指標はこれらの測定結果の信頼性・精度に関わります。

  • 校正精度や使用するケーブル・アクセサリの品質も、最終的な測定信頼性に大きく影響します。