ベクトルネットワークアナライザ(VNA)とは?

ベクトルネットワークアナライザ(Vector Network Analyzer, VNA)は、高周波・マイクロ波領域における電子部品や回路の 伝送特性や反射特性(Sパラメータ) を測定するための装置です。


🔧 VNAの基本機能

項目 内容
測定するもの Sパラメータ(S11, S21, S12, S22など)
測定対象 アンテナ、フィルタ、アンプ、ケーブル、コネクタ、ミキサなど
測定可能な特性 リターンロス、インサーションロス、反射係数、VSWR、位相遅延、群遅延など
周波数領域での測定 一定範囲の周波数にわたって、信号の振幅・位相を解析
時間領域変換(TDR) 周波数データから時間領域波形に変換して、障害箇所などを特定(オプション機能)

⚙️ 測定原理(簡略)

  1. VNA内部の信号源からRF信号を生成し、被測定物(DUT)に入力

  2. DUTからの 反射波透過波をそれぞれの方向に分離して検出

  3. 高精度な位相検出器によって振幅と位相を同時に測定

  4. 得られたデータをSパラメータとして表示・解析


📊 Sパラメータとは?

Sパラメータ 内容
S11 入力ポートからの反射(Return Loss) アンテナの整合特性
S21 入力→出力の透過(Insertion Loss/Gain) フィルタやアンプの特性
S12 出力→入力方向の透過 アンプの逆方向利得(アイソレーション)
S22 出力ポートからの反射 出力整合の確認

✅ 主な用途

  • RF回路の設計・評価(アンプ、フィルタ、ミキサなど)

  • アンテナの反射特性測定(VSWR、リターンロス)

  • ケーブルやコネクタの伝送特性確認

  • EMC対策やシグナルインテグリティ評価

  • 半導体デバイスの高周波特性評価


🔍 よく使われる業界・分野

  • 通信(5G, Wi-Fi, 衛星通信)

  • 航空宇宙・防衛

  • 車載電子機器(レーダー、ADAS)

  • 教育・研究機関

  • 生産ラインでの自動測定システム


🧪 校正(Calibration)の重要性

  • VNAは非常に高精度な測定を行うため、定期的な校正が必須です。

  • 主な校正手法:

    • TOSM(Open/Short/Load/Thru)

    • TRL(Through, Reflect, Line)

    • 電子校正(ECal)