
マイクロ波電力伝送(MWPT)は、電力を電磁波であるマイクロ波に変換し、ワイヤレスで送電する技術です。現在、実用化に向けた研究開発が進んでおり、特にドローンへの給電や、遠隔地のIoTセンサーへの電力供給といった分野での応用が期待されています。
現状と課題
現状では、MWPTの実用化にはいくつかの技術的、制度的な課題が存在します。
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電力伝送効率の向上: 送電距離が伸びるほど、マイクロ波の拡散による電力ロスが大きくなるため、システムの全体的な効率向上が求められています。現在は70%程度の効率が達成されていますが、さらなる向上が必要です。
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ビーム制御技術: ドローンなどの移動体への安定的な給電には、マイクロ波のビームを高精度に追尾・制御する技術が不可欠です。ビームの方向制御技術の精度向上が課題となっています。
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安全性と制度化: 人体や他の無線機器への影響を考慮した安全基準の確立と、それに伴う法制度の整備が重要です。電波防護指針や国際的なガイドラインを遵守し、国民が安心して利用できる環境を整える必要があります。
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小型・軽量化: 送電・受電機器の小型化や軽量化は、特にドローンやウェアラブルデバイスへの応用において重要な課題です。
最新動向と将来性
これらの課題を克服するため、世界中で研究開発が進んでおり、日本でも様々な取り組みが行われています。
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ドローンへの給電: ATR、大学、京セラ、東京電力や三菱電機などの研究グループが、ドローンへの給電を目指して研究開発を行っています。これにより、ドローンの飛行時間を大幅に延長し、送電線の巡視や点検など、活用の場を広げることが期待されます。
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宇宙太陽光発電: 将来的な大きな目標として、宇宙空間で太陽光発電を行い、その電力をマイクロ波で地上に送電する「宇宙太陽光発電システム(SSPS)」の研究開発が進められています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、長距離無線電力伝送技術の確立に向けて、ビーム制御技術の研究開発を実施しています。
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IoT分野への応用: バッテリー交換が困難な場所にある多数のIoTセンサーへのワイヤレス給電は、MWPTの有力な応用分野の一つです。バッテリー交換の手間をなくすことで、IoTセンサーの普及を加速させる可能性があります。
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制度化の進展: 日本では、屋内に限定された空間伝送型無線給電について、2020年に制度化がなされ、2021年から社会実装が始まっています。これにより、利用条件は限定的であるものの、まずは屋内の小規模な電力伝送から実用化が加速しています。
MWPTは、バッテリー交換の手間をなくし、エネルギー供給のあり方を大きく変える可能性を秘めた技術です。今後、技術的課題の解決と制度整備が進むことで、様々な分野での応用が期待されています。
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