SIGLENT(シグレント) ベクトル・ネットワーク・アナライザ SNA5000Aシリーズ

 

マルチパス伝搬とノッチ

 

マルチパス伝搬とは、送信機から送られた電波が、受信機に直接届く経路だけでなく、山や建物、地面などで反射や回折を繰り返して複数の経路を通り、時間差をもって受信機に到達する現象です。

このとき、直接波と反射波は異なる経路を通るため、受信機に届くまでにわずかな時間差が生じます。この複数の電波が合成される際、波の位相が一致すれば電波は強め合い、位相が逆になると打ち消し合って弱まります。


 

マルチパス伝搬によるノッチ

 

電波が打ち消し合う現象は、周波数選択性フェージングと呼ばれ、特定の周波数帯域で電波強度が極端に低下します。この現象が、周波数応答特性のグラフで鋭く落ち込む谷間(V字型の切れ込み)のように見えることから、「ノッチ」と呼ばれます。

このノッチが発生すると、その周波数帯域の信号は大きく減衰し、受信品質が著しく低下したり、通信不能になったりする原因となります。特に、伝送速度が速いデジタル通信では、このノッチが原因でシンボル間干渉が発生し、データの復元が困難になることがあります。


 

ノッチの対策

 

マルチパス伝搬によるノッチは、通信品質を維持する上で大きな課題となります。これに対する主な対策として、以下のような技術があります。

  • OFDM(直交周波数分割多重):一つのデータを複数の周波数帯に分割して送信する方式で、地上デジタル放送やWi-Fiなどで使われています。特定の周波数帯でノッチが発生しても、他の周波数帯で信号を受信できるため、ノッチの影響を軽減できます。

  • アダプティブイコライザ:受信機側で、マルチパスによる歪みを自動的に補正する回路です。遅れて到着した反射波を適切に合成することで、信号の歪みを抑え、ノッチの影響を打ち消します。

  • レイク受信:GPSなどで利用される技術で、受信した複数の電波(直接波と反射波)を時間差ごとに分離し、それぞれを独立した受信機で受信した後に合成することで、信号をより強く、安定して受信します。

 

 

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