マルチメーターの選び方
**マルチメーター(テスター)**は、電圧・電流・抵抗など複数の電気量を1台で測定できる便利な計測器です。家庭用から工業用まで幅広いモデルがありますが、用途や測定対象に合った製品を選ぶことが正確で安全な測定の第一歩です。ここでは、マルチメーターを選ぶ際のポイントをわかりやすく解説します。
1. 用途を明確にする
まず、「どこで、何を測定するのか」をはっきりさせましょう。
用途例 | 選定の方向性 |
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電子工作・教育 | 小型・低価格・基本機能で十分 |
家電・低圧設備の点検 | 安全性(CAT II以上)と耐久性重視 |
工場・商業施設の保守 | 高耐圧・高精度(CAT IIIまたはIV) |
精密開発・研究用途 | 高分解能・多機能・データ記録対応型 |
2. 必要な測定機能を確認
基本機能に加え、必要に応じて以下の追加機能の有無を確認します。
機能 | 用途 |
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直流/交流電圧・電流 | 基本測定機能(ほぼ全機種搭載) |
抵抗/導通チェック | 回路の開通確認、部品チェック |
静電容量測定 | コンデンサのチェック |
周波数測定 | PWMや信号線の確認に便利 |
ダイオードテスト | 半導体の極性・劣化確認 |
温度測定 | サーミスタや加熱部品の確認(K熱電対対応) |
データホールド/最大・最小表示 | 値の記録が必要な作業に便利 |
オートレンジ機能 | 初心者でも操作ミスを減らせる |
3. 安全カテゴリ(CAT)を確認
作業環境に応じて、**安全規格(CAT I~IV)**が合致しているかを確認します。
カテゴリ | 主な対象 |
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CAT I | 電子回路などの内部低電圧機器 |
CAT II | 家庭用電源コンセント等(低圧) |
CAT III | 建物内配線、分電盤など |
CAT IV | 屋外配線、高エネルギー回路 |
作業対象が商用電源に近づくほど、より高いCATカテゴリが必要です。
4. 表示分解能・精度を確認
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表示桁数(例:4000カウント、6000カウント)
高いほど細かい変化が読み取れる -
基本確度(±%表記)
精密用途では±0.1~0.5%程度が理想
5. サイズ・使い勝手
項目 | 解説 |
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携帯性 | コンパクトで持ち運びしやすいタイプか、据え置き型か |
表示画面の見やすさ | バックライト付き・大型表示が便利 |
オートパワーオフ | 電池の節約に便利 |
保護構造 | 落下防止のラバーカバー付きが安全 |
電源方式 | 電池式(9Vや単3)または充電式 |
6. 上級者向け機能(必要に応じて)
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True RMS測定:歪んだ波形でも正確な交流値が測定可能
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Bluetooth/USB出力:PC連携や記録用途に
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ロギング機能:時間経過での値の変化を記録
まとめ
マルチメーターは「高機能=正解」ではありません。
測定対象・使用環境・操作レベルに合わせて最適なモデルを選ぶことが重要です。
初心者は「基本機能+安全性」、業務用途では「精度・信頼性・拡張性」を重視して選ぶとよいでしょう。