リアルタイム測定(Real-time Measurement)とは

~信号や現象の変化をリアルタイムで取得・表示する測定技術~


■ 定義

**リアルタイム測定(Real-time Measurement)とは、観測対象となる物理量や電気信号の変化を、時間遅延なくリアルタイムで測定・表示・記録する方式を指します。

通常の測定とは異なり、事前にトリガを待つことなく、連続的かつ高速で信号を取得し続けるのが最大の特徴であり、突発的な現象(グリッチ、ノイズ、異常値)や高速な変化を逃さず観測できます。


■ 特徴と利点

特徴 内容
✅ トリガ不要で連続観測可能 任意の瞬間の波形変化を捉えやすい
✅ 測定漏れが極めて少ない 通常のサンプリング型測定では見逃される異常を検出
✅ 高速波形処理 数百万波形/秒以上の解析能力(リアルタイム処理型オシロスコープ等)
✅ タイムスタンプ記録 現象発生時刻の追跡や、他機器との同期解析に活用可能

■ 適用される機器の例

測定器 リアルタイム測定の対象
✅ オシロスコープ(リアルタイム型) 高速デジタル信号、トランジェント異常、電源起動波形の瞬時解析
✅ スペクトラムアナライザ(リアルタイムFFT型) 短時間だけ現れるRF信号(スプリアス、干渉信号)の検出
✅ パワーメーター・電力解析装置 インバータ出力や回生電流の急変挙動
✅ CV測定器・LCRメーター(一部機種) 高速スイープや充放電過程の連続観測
✅ データロガー・波形記録計 複数チャネルの長時間トレンドをリアルタイムに監視

■ アプリケーション例

分野 用途
✅ 電源設計・評価 起動時の突入電流や、リップル・ノイズの追跡
✅ 通信機器 RF干渉波・パルス信号の瞬間的な出現を検知
✅ 自動車電子制御 ECUの動作異常、CAN/LIN通信のトラブル解析
✅ 材料評価 時間依存性を持つ誘電率・損失角のリアルタイムモニタリング
✅ 工場ライン監視 自動化装置のタイミング異常、電流ピークの監視など

■ リアルタイム測定とトリガ測定の違い

項目 リアルタイム測定 トリガ測定(従来型)
取得方式 常時・連続測定 トリガ条件に合致した瞬間のみ記録
データ損失 非常に少ない 条件に合致しなければ取得されない
適した用途 瞬時異常の検出、波形統計 決まった現象の詳細観察
処理速度 高速波形処理が必要 トリガ制御がメイン

■ 測定上の注意点

  • ✅ 大量データ処理に対応した波形処理エンジン/DSPを搭載した装置が必要

  • ✅ 保存容量とメモリ深度が多い機種ほど、有効な観測が可能

  • ✅ 通常のオシロスコープやLCRメーターとは動作モードが異なる場合があるため、設定に注意


■ まとめ

項目 内容
リアルタイム測定とは? 信号を常時連続で取得・表示し、瞬時の変化を見逃さない測定方式
メリット トリガ不要・異常検出率向上・高速解析可能
使用例 オシロ、スペアナ、LCR、電力測定器などでの瞬時変化検出
導入効果 異常現象の早期発見・設計品質向上・検査自動化への貢献