ロゴスキープローブとは

**ロゴスキープローブ(Rogowski Probe)**とは、電流を測定するための非接触型のセンサで、交流電流の波形を高精度・広帯域で観測するためのプローブです。特に、高電流・高速スイッチング回路の測定に適しており、パワーエレクトロニクスやモータードライブ分野で広く活用されています。


原理と構造

ロゴスキープローブは、トロイダル(円形)形状の空芯コイルを電流導体に巻き付ける構造になっています。導体に流れる時間的に変化する電流(交流)に応じて、コイルに誘導電圧が発生します。この電圧を積分回路で処理することで、電流波形として再現します。

✅ 電流の変化(di/dt)に比例する電圧を検出し、積分することで電流を得る


特徴と利点

  • 非接触測定が可能(回路を切断せず測定できる)

  • 広い周波数帯域に対応(数Hz〜数MHz)

  • 高電流対応(数kAまで)

  • 小型・軽量で取り回しが良い

  • 絶縁性が高く、安全性に優れる


ロゴスキープローブの主な用途

用途 説明
インバータ・モーター駆動回路の電流波形測定 スイッチング動作中の電流変動を精密に観測
パワーエレクトロニクスの評価 IGBTやMOSFETのスイッチング損失評価など
ノイズ解析・突入電流の観測 急激な電流変動の追跡に有効
非破壊での電流測定 回路を変更せずにクランプするだけで測定可能

使用上の注意点

  • DC(直流)成分は測定できない
     ロゴスキープローブは交流専用です。直流電流を測定する場合は、ホール効果型電流プローブなどが必要です。

  • 積分器の安定性に依存する
     測定波形は積分回路で復元されるため、ゼロ点ドリフトやオフセットに注意が必要です。

  • 取り付け位置・ループ形状によって感度が変化
     導体をプローブの中心に正確に配置することで、正確な測定が可能になります。


他の電流プローブとの違い

項目 ロゴスキープローブ ホール効果型 シャント抵抗
測定方式 誘導+積分 磁界検出 電圧降下測定
DC測定 不可
高周波応答性 優秀 中程度 優秀(だが発熱あり)
非接触 不可(回路に挿入)
絶縁性 高い 高い 低い(GND共有)

まとめ

ロゴスキープローブは、非接触で広帯域・高電流のAC測定が可能な電流測定ツールです。特に、スイッチング電源やインバータのような高速・高電圧・高電流の電力回路において、安全かつ高精度な測定を実現します。適切な使用方法と環境整備により、より信頼性の高い波形観測が可能となります。