📉 低電力レクテナ設計の課題と高効率化技術
低電力レクテナ(Rectenna: Rectifying Antenna)の設計は、微弱な受信電力(数 μW〜数 mW程度)をいかにして高効率に直流(DC)電力に変換するかが最大の課題となります。空間伝送型ワイヤレス電力伝送(WPT)システムにおいて、広範囲のセンサーやIoTデバイスをバッテリーレス化するために不可欠な技術です。
1. ⚡️ 最大の設計課題:ダイオードの動作
低電力レクテナ設計における最大の技術的課題は、整流回路に用いられるダイオードの特性です。
-
ダイオードの順方向電圧 (VF) の問題:
-
一般的なショットキーバリアダイオード(SBD)は、電流を流し始めるために0.2V〜0.4V程度の順方向電圧が必要です。
-
低電力環境では、アンテナで受信したRF信号の電圧がこの$V_F$を下回ることが多く、ダイオードが十分に動作せず、結果として整流効率が著しく低下します。
-
-
半導体の選定:
-
低$V_F$、低寄生容量の高性能な整流用半導体の選定が不可欠です。従来のシリコンSBDに加え、GaAs(ガリウムヒ素)やGaN(窒化ガリウム)ベースのダイオードなどが研究されています。
-
2. ⚙️ 高効率化のための回路・構成技術
低電力環境下でダイオードを効率良く動作させ、電力変換効率(RF-DC変換効率)を高めるための主要な設計手法を以下に示します。
① インピーダンス整合回路の最適化
-
変動する入力インピーダンスへの対応: レクテナの入力インピーダンスは、入力電力レベルによって大きく変動します。
-
整合回路の設計: 受電アンテナの出力インピーダンスと、整流回路の入力インピーダンスを広範囲の入力電力レベルで一致させるインピーダンス整合回路(マッチング回路)を適切に設計し、RFエネルギーの反射を最小限に抑えます。
② 高調波の再利用(ハーモニック・リターミネーション)
-
高調波の発生: 整流回路内の非線形素子であるダイオードは、基本波(受信した周波数)だけでなく、その高調波(2倍、3倍などの周波数)を発生させます。
-
閉じ込め回路の設計: 高調波がアンテナから放射されるとエネルギー損失になるため、**高調波処理回路(フィルタ)**を設けて高調波を反射させ、整流回路内に閉じ込めます。これにより、高調波エネルギーをDC変換に再利用し、効率を向上させます。
③ マイクロ波電圧の昇圧
-
ダイオード駆動電圧の確保: 低電力で受信電圧が低い場合でも、整流回路内でマイクロ波電圧を昇圧し、ダイオードのVFを超える電圧を印加することで、整流動作を確保します。
-
損失低減: 電圧を昇圧することで回路に流れる電流(I)が減少し、ダイオードの熱損失(R・ I2)を低減し、効率を高める効果もあります。
④ 整流回路構成の工夫
-
アンテナとダイオードの直結: 回路の損失を抑制するため、受電アンテナに整流ダイオードを直接接続し、回路損失を極力抑制する構成も検討されます。
-
高インピーダンス整流回路: 整流回路の線路の特性インピーダンスを全体的に上げることで、整流効率を改善する研究も進められています。
3. 🇯🇵 日本における主要な周波数帯(920MHz帯)
日本国内の法改正により、WPT用として利用が進んでいる920MHz帯は、マイクロ波帯の中では比較的周波数が低いため、伝搬損失が少なく、建物や障害物の影響を受けにくいという特徴があります。
-
920MHz帯レクテナの設計では、アンテナサイズが大きくなる傾向があるため、アンテナ素子を小型化しつつ、高効率な整流回路と一体設計することが求められます。
これらの技術を組み合わせることで、低電力環境におけるレクテナのRF-DC変換効率を最大限に高め、WPTシステムの実用化を目指します。
PR:
![]() |
SSG6M80Aシリーズ ・Coming soon
|
![]() |
![]() |
![]() |
SSA6000A Series Signal Analyzer Main Features ・Coming soon
|
![]() |
SNA6000A Series Vector Network Analyzer Key Features
|
![]() |
SDS8000Aシリーズ オシロスコープ 特長と利点 ・Coming soon |
![]() |
SIGLENT お買い得キャンペンーン実施中(~2026/03/31まで) SSA3000X-R シリーズ リアルタイム・スペクトラム・アナライザ (EMIフィルタ、準尖頭値検波器、EMI測定モード)
姉妹機も実施中(EMI測定機能は同じです) |









