
光絶縁(フォトカプラ、光アイソレータなど)は、EMC(電磁両立性)対策において非常に有効な手法です。
EMCにおける光絶縁の役割
EMCは、機器が電磁ノイズを発生させないこと(エミッション)と、外部からの電磁ノイズによって誤動作しないこと(イミュニティ)の両方を満たすことを指します。光絶縁は、この両面で重要な役割を果たします。
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ノイズの伝導経路を遮断する
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電気的な絶縁(ガルバニック絶縁)を行うことで、グランドループと呼ばれるノイズ伝導経路を物理的に切断します。
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電源ラインや信号ラインを介して伝わるコモンモードノイズやノーマルモードノイズの侵入を防ぎます。
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電磁界の放射を抑制する
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電気的に分離された領域間で信号を伝送する際、ノイズ源となる高周波電流のループを小さくすることができます。
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これにより、不要な電磁界の放射(EMI)を抑制する効果があります。
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光絶縁を用いた具体的なEMC対策法
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グランドループの切断
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異なる電源系統や、大地(アース)の電位が異なるシステム間で通信を行う場合に、光絶縁を介することでグランドループを形成せず、ノイズの伝導を防ぎます。
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例えば、PCとPLC(プログラマブルロジックコントローラ)のように、電位の異なるシステムを接続する場合に有効です。
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高電圧・サージ対策
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雷サージやモーターの開閉サージなど、大きなノイズが乗る可能性のある回路と、ノイズに弱い制御回路を光絶縁で分離することで、誤動作や破損を防ぎます。
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産業機器や医療機器など、高い信頼性が求められる分野で特に重要です。
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アナログ回路の保護
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高精度なアナログ信号を扱う回路はノイズの影響を受けやすいため、光アイソレーションアンプなどを用いて、デジタル回路やノイズ源となりうる回路から分離します。
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光絶縁以外のEMC対策
光絶縁は非常に強力な対策法ですが、単独で完結するものではありません。他のEMC対策と組み合わせて、総合的にノイズを抑制することが重要です。
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シールド
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ケーブルや機器を導電性の高い材料で覆い、電磁界の侵入・放射を防ぎます。
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フィルタ
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回路にLCフィルタやフェライトビーズなどを挿入し、特定の周波数帯のノイズを除去します。
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配線設計
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配線ループを小さくする、ツイストペアケーブルを使用するなど、適切な配線を行うことでノイズの影響を低減します。
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グラウンディング
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適切な接地(アース)を行うことで、ノイズ電流を大地に逃がします。
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これらの対策を組み合わせることで、より効果的なEMC対策を実現できます。