
パワーMOSFET、SiC、GaNなどの半導体デバイスにおいて、Ciss、Coss、Crss、Rgは寄生パラメータと呼ばれるもので、デバイスの性能、特にスイッチング特性に大きく影響する重要な要素です。
これらのパラメータは、デバイスの内部構造によって必然的に生じる、いわば「見えない抵抗やコンデンサ」のようなものです。それぞれの意味を具体的に見ていきましょう。
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Ciss (入力容量: Input Capacitance)
Cissは、MOSFETのゲートとソース間の容量と、ゲートとドレイン間の容量の合計です。
これは、ゲートを駆動する際に充電・放電する必要のある容量を示しており、この値が大きいほど、ゲートの駆動に必要な電流が大きくなり、スイッチング速度が遅くなる傾向があります。
Coss (出力容量: Output Capacitance)
Cossは、MOSFETのドレインとソース間の容量と、ゲートとドレイン間の容量の合計です。
これは、デバイスがオフ状態からオン状態に切り替わる際に充電される容量です。この容量が大きいと、スイッチング時の損失が大きくなることがあります。
Crss (帰還容量: Reverse Transfer Capacitance)
Crssは、MOSFETのゲートとドレイン間の容量そのものです。
この容量は、ミラー容量とも呼ばれ、ミラー効果という現象を引き起こします。スイッチング中にドレイン電圧が大きく変動すると、この容量を通じてゲート電圧にも影響を与え、スイッチングの遅延やリンギング(電圧の振動)の原因となります。スイッチング特性において、特に重要視されるパラメータの一つです。
Rg (ゲート抵抗: Gate Resistance)
Rgは、MOSFETの内部に存在する抵抗です。外部に接続するゲート抵抗(外部ゲート抵抗)とは別に、パッケージやワイヤーボンディングなど、デバイスの物理的な構造によって生じます。
このRgと前述のCissが組み合わさることで、ゲートの駆動回路がRC回路を形成します。このRC回路の時定数によって、ゲートの充電・放電時間が決まり、結果としてスイッチング速度や発熱、リンギングに影響を与えます。
まとめ
これらの寄生パラメータは、MOSFETのスイッチング性能を左右する鍵となります。
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Ciss、Coss、Crssは、スイッチング時に充電・放電が必要な容量であり、スイッチング速度や損失に影響します。
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Rgは、これらの容量を充電・放電する際の速度を決定づける内部抵抗です。
特にCrssはミラー効果の原因となるため、スイッチングの遅延やリンギングを評価する上で非常に重要なパラメータです。これらのパラメータを考慮して、最適な駆動回路を設計することで、デバイスの性能を最大限に引き出すことができます。