測定速度(Measurement Speed)とは
~単位時間あたりに取得できる測定データの速さを示す性能指標~
■ 定義
測定速度(Measurement Speed)とは、計測器が1つの測定値を取得・処理するのにかかる時間、または単位時間あたりに処理できる測定回数のことを指します。
特に量産検査やスイープ測定、連続計測などの場面において、評価効率・スループットの観点から非常に重要な性能指標となります。
■ 単位と表現例
表現 | 意味 |
---|---|
ms/point(ミリ秒/ポイント) | 1回の測定に要する時間 |
points/sec(ポイント/秒) | 1秒間に取得できるデータ点数(逆数) |
ms/scan | スイープ(例:周波数スイープ全体)にかかる時間 |
■ 測定速度に影響する主な要素
要素 | 内容 |
---|---|
✅ 測定モード | 高速モード(Fast)/標準モード(Normal)/高確度モード(Hi-Accuracy)など |
✅ 積算回数(平均化) | 測定の安定性と引き換えに時間がかかる |
✅ トリガ設定 | オートトリガ/エクスターナルトリガ/スキャン間の待機時間 |
✅ 通信速度(I/O速度) | GPIB/USB/LANによるデータ転送スピードの違い |
✅ 内部演算処理量 | 高度な解析機能(インピーダンス演算やSパラ演算など)による遅延 |
■ 測定速度の比較例(インピーダンスアナライザなど)
モード | 測定時間(1ポイント) | 精度の特徴 |
---|---|---|
Fast | 約1ms〜5ms | スループット重視、ばらつきあり |
Normal | 約10ms〜50ms | 安定性と速度のバランス |
Hi-Accuracy | 約100ms〜200ms | 精度優先、量産には不向き |
■ 測定速度が重要なアプリケーション
分野 | 用途 |
---|---|
✅ 生産ラインの全数検査 | 測定時間が長いとタクトタイムに直結 |
✅ C-V / I-Vスイープ測定 | 電圧・周波数を連続変化させる高速応答が求められる |
✅ 材料評価 | 複数周波数・温度下での高速スキャン |
✅ 高次統計解析 | 測定点数が多いほど再現性の高い評価が可能 |
■ 測定速度と精度のトレードオフ
多くの計測器では、「測定速度を速めるとノイズが増え、測定精度が落ちる」傾向があります。
用途に応じて以下のようなバランス調整が必要です:
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量産検査 → 高速モード+しきい値判定
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研究開発 → 精度優先+繰り返し測定
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不具合解析 → 可変モードで特性把握
■ まとめ
項目 | 内容 |
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測定速度とは? | 計測器が1点または一定範囲のデータを取得するのに要する時間 |
主な単位 | ms/point、points/sec、ms/scan |
重要な場面 | スイープ測定、生産検査、自動化測定、データロギング |
考慮点 | 精度・通信速度・演算負荷とのバランスが必要 |
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