直流抵抗(DC Resistance, RDC)とは
~直流電流を流したときに生じる、最も基本的な電気抵抗値~
■ 定義
直流抵抗(DC Resistance, RDC)とは、電気回路に直流電流を流したときに観測される、導体または素子の抵抗値のことを指します。
直流条件下では、インダクタンスやキャパシタンスの影響が無いため、材料の固有抵抗や形状によって決定される純粋な抵抗成分を表しています。
■ 基本式
直流抵抗 RR は、オームの法則に基づいて以下の式で表されます:
R=VIR = \frac{V}{I}
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RR:抵抗値(Ω)
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VV:印加電圧(V)
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II:電流(A)
■ 用途・測定目的
用途 | 内容 |
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✅ コイル・インダクタの巻線抵抗測定 | 発熱や電力損失の源となるため、RDCは非常に重要なパラメータ |
✅ 変圧器(トランス)の巻線間抵抗差チェック | 巻きムラ・断線・製造不良の検出 |
✅ モーター・リレー・電磁石の抵抗確認 | 通電前の健全性チェック(断線・短絡の検出) |
✅ プリント基板のパターン抵抗測定 | 高精度な電流制御用途における微小抵抗管理 |
✅ 電池内部抵抗の一部評価 | 内部直流抵抗と直列インピーダンス成分の分離評価 |
■ 測定機器と方法
測定器 | 測定方式 | 特徴 |
---|---|---|
✅ マルチメーター | 2端子測定 | 手軽だがリード線や接触抵抗の影響大 |
✅ 低抵抗メーター | 4端子測定(ケルビン測定) | 高精度測定が可能。μΩレベルにも対応 |
✅ LCRメーター | 周波数0Hz(直流)モードで測定 | 他のパラメータ(LやC)との同時測定も可能 |
✅ トランス試験器 | 自動で各巻線のRDCを評価 | 量産・検査用途で活躍 |
■ 他の抵抗との違い
種類 | 内容 |
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RDC(直流抵抗) | 周波数0Hzでの純粋な抵抗値(リアクタンスなし) |
AC抵抗(交流時の抵抗) | 皮相電力のうち損失成分であり、周波数やスキン効果の影響を受ける |
等価直列抵抗(ESR) | コンデンサやコイルの損失要因として扱われる、周波数依存の抵抗成分 |
■ 測定上の注意点
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✅ ケーブルやプローブの接触抵抗を除去するために、**4端子測定(ケルビン接続)**が推奨されます
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✅ 温度の影響を受けやすく、発熱による抵抗変化に注意(銅線など)
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✅ μΩオーダーの測定では、**ノイズや熱起電力(ゼーベック効果)**の影響を排除する必要あり
■ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
直流抵抗(RDC)とは? | 電流と電圧の比から求める、純粋な直流条件下での抵抗値 |
主な測定対象 | コイル、トランス、リレー、モーター、配線など |
使用機器 | 低抵抗メーター、LCRメーター、巻線試験器など |
測定のポイント | 4端子測定で高精度化、温度影響・接触抵抗に注意 |
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