✅ 測定器の絶縁と安全
① 絶縁とは何か?
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絶縁(insulation) = 電気的に導通していない状態
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測定器での絶縁は主に以下の2つ:
1️⃣ 測定端子と筐体アース(電源系)間の絶縁
2️⃣ 複数の測定端子間(チャネル間)の絶縁 -
絶縁により:
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感電事故防止
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短絡事故防止
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浮遊電位測定の実現
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接地ループノイズ防止
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② なぜ絶縁が必要か?
理由 | 内容 |
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感電防止 | 測定対象と筐体の電位差で感電リスクが生じるため |
測定対象の保護 | 接続ミスによる短絡を防止 |
機器内部回路の保護 | 過電圧・過電流から入力回路を守る |
ノイズ対策 | 接地ループ・コモンモードノイズの抑制 |
③ 測定器の主な絶縁ポイント
絶縁部位 | 説明 |
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測定入力絶縁 | 測定端子と筐体アース間を絶縁 |
チャネル間絶縁 | 多チャネル機器で各チャネル間を絶縁 |
電源絶縁 | AC電源入力と内部回路間を絶縁(トランス絶縁) |
通信ポート絶縁 | USB、LAN、RS-232などの通信ライン絶縁 |
✅ 安全規格における絶縁要件
規格 | 主な対象 | 絶縁要件例 |
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IEC 61010-1 | 試験・測定機器 | 基本絶縁、強化絶縁、沿面距離、耐圧試験 |
IEC 61010-2-030 | 多機能測定器 | 入力端子絶縁、誤挿入保護 |
IEC 61010-2-033 | DMM専用規格 | 電圧入力絶縁、過電圧保護設計 |
IEC 60601 | 医療用測定器 | 非常に高レベルな絶縁要求(人体保護) |
✅ 測定器の絶縁構造の分類
絶縁種類 | 内容 | 例 |
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基本絶縁(Basic Insulation) | 通常使用に対する最低限の絶縁 | DMMの入力絶縁 |
補助絶縁(Supplementary Insulation) | 故障時の追加保護 | 多重絶縁構造 |
二重絶縁(Double Insulation) | 基本+補助の組合せ | クラスII機器(樹脂筐体機器など) |
強化絶縁(Reinforced Insulation) | 単一絶縁で高耐圧を確保 | 医療機器、安全設計品 |
✅ 測定器の安全レベルに影響する要素
要素 | 重要性 |
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入力端子の耐圧 | CAT規格により分類(CAT II, III, IV) |
絶縁バリアの配置 | 入力系統と内部回路の分離設計 |
保護回路の有無 | ヒューズ、TVS、MOV、クランプ回路 |
クリアランス・沿面距離 | 高電圧耐性に直結 |
✅ 絶縁と安全に強い測定器の例
測定器分類 | 絶縁特性 |
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DMM | 測定端子が筐体アースから絶縁(標準設計) |
ハンディDMM | バッテリー駆動により筐体全体が浮遊(安全性高) |
アイソレーションアンプ | 入力-出力間完全絶縁 |
絶縁型オシロスコープ | チャネル間、筐体間すべて絶縁 |
データロガー | 多チャネル絶縁が可能 |
✅ 絶縁が不十分な場合の主な事故例
事故例 | 原因 |
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オシロスコープGND短絡事故 | BNCシールドの接地不理解 |
電流測定端子誤接続事故 | 電圧印加でヒューズ・回路破壊 |
接地ループノイズ | GND多点接続による循環電流 |
感電事故 | 絶縁不良の機器接触 |
✅ 一言でまとめると:
測定器の絶縁は「使用者の命を守るための設計」と「測定品質を守るための設計」の両面がある。
適切な絶縁が測定器安全設計の中心。
✅ 最後に: SIGLENT SHS1000X の簡単な紹介
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完全絶縁型のオシロスコープ
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測定端子は他チャネル・筐体アース・電源回路すべてから絶縁
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各チャネルが独立してフローティング測定可能
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高電圧系統(CAT III 600V / CAT II 1000V)対応
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バッテリー駆動で現場保守や安全測定に非常に適している
高電位差の安全な現場測定が必要な場合に非常に有効な機種