複素インピーダンス(Complex Impedance)とは
~交流回路における「抵抗」と「リアクタンス」を統合的に表現する複素数の概念~
■ 定義
複素インピーダンス(complex impedance)とは、交流(AC)信号に対する回路の抵抗成分(R)とリアクタンス成分(X)を合わせた“合成的な電気的抵抗”を複素数で表したものです。
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記号:Z
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単位:オーム(Ω)
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複素数表現:
Z=R+jXZ = R + jX(R:抵抗成分、X:リアクタンス、j:虚数単位)
■ 実数と虚数の構成
成分 | 意味 | 説明 |
---|---|---|
R(Real part) | 抵抗 | 実際にエネルギーを消費する成分(熱として消費) |
X(Imaginary part) | リアクタンス | エネルギーを一時的に蓄える成分(コンデンサ/インダクタによる) |
リアクタンスはさらに次の2つに分類されます:
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誘導性リアクタンス(XL):インダクタによる、正の虚数成分
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容量性リアクタンス(XC):コンデンサによる、負の虚数成分
■ 極形式による表現(|Z|∠θ)
複素インピーダンスは、極形式でも表現できます:
Z=∣Z∣∠θZ = |Z| \angle \theta
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∣Z∣=R2+X2|Z| = \sqrt{R^2 + X^2}:インピーダンスの大きさ(絶対値)
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θ=tan−1(X/R)\theta = \tan^{-1}(X/R):位相角(抵抗成分に対する遅れ・進みの角度)
■ 用途・応用例
用途 | 内容 |
---|---|
✅ 回路設計 | インピーダンスマッチング、フィルタ設計、共振設計 |
✅ 部品評価 | コンデンサ、インダクタ、トランス、磁性体などのAC特性測定 |
✅ 高周波回路解析 | RFデバイス、アンテナの整合評価 |
✅ マテリアル測定 | 誘電率、透磁率、電気伝導度の周波数依存解析 |
■ 測定機器と表示形式
機器 | 表示形式の例 |
---|---|
LCRメーター | R, X, |
インピーダンスアナライザ | Bodeプロット( |
ネットワークアナライザ | Sパラメータ → インピーダンス変換(Zマップ) |
■ 複素インピーダンスと他の指標との関係
指標 | 定義・関係 |
---|---|
アドミタンス(Y) | Zの逆数: Y=1Z=G+jBY = \frac{1}{Z} = G + jB |
Q値(Quality Factor) | ( Q = \frac{ |
D(損失係数) | ( D = \frac{R}{ |
tanδ | 誘電損失の評価にも関連 |
■ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
複素インピーダンスとは? | 抵抗とリアクタンスを複素数で表現した交流回路の合成抵抗 |
表現形式 | 直交形式(R + jX)、極形式( |
関連測定 | LCR、共振、インピーダンス整合、誘電・磁気特性評価 |
主な測定器 | LCRメーター、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザ |
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