超広帯域光増幅技術とは、光ファイバー通信において、非常に広い波長帯域(周波数帯域)にわたる光信号を、一括して増幅する技術です。
これは、光通信の伝送容量を大幅に増やすための鍵となる技術であり、特に大容量の長距離通信システムや、次世代の光ネットワーク(IOWN、6Gなど)の基盤技術として重要視されています。
開発の背景と必要性
従来の光ファイバー通信では、伝送容量を増やすために**波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)**という、異なる波長の光信号を束ねて伝送する技術が使われています。
伝送容量をさらに増やすには、以下の二つのアプローチがあります。
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高密度化: 既存の波長帯域内で、波長の間隔を詰めて信号数を増やす。
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広帯域化: 利用できる波長帯域そのものを広げる。
広帯域化を実現するためには、より広い波長範囲の光信号をまとめて増幅できる超広帯域光増幅器が不可欠となります。
超広帯域を実現する主要な技術
超広帯域光増幅を実現するために、複数の技術が組み合わせられたり、応用されたりしています。
1. ラマン増幅(Raman Amplification)
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原理: 光ファイバー自体を増幅媒体として利用し、信号光より波長の短い励起光を高い強度で入射することで、光ファイバー内で誘導ラマン散乱と呼ばれる非線形光学効果を発生させ、信号光を増幅します。
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特徴:
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特定の波長帯に限定されず、励起光の波長を適切に選ぶことで広い波長範囲での増幅が可能です。
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複数の励起光を組み合わせることで、より平坦で広い増幅帯域を実現できます。
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2. 希土類添加ファイバ増幅器の組み合わせ
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EDFA(エルビウム添加ファイバ増幅器):
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光通信で最も広く使われる増幅器で、主にC帯(1.55 $\mu\text{m}$ 帯)とL帯(C帯より長波長側)を増幅します。
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超広帯域を実現するために、異なる希土類元素(例えば、ツリウムを添加したTDFFAやイッテルビウムを添加したYDFAなど)をドープしたファイバ増幅器を組み合わせて、増幅帯域を広げます。
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3. 光パラメトリック増幅 (OPA: Optical Parametric Amplification)
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原理: 光ファイバーの非線形光学効果を積極的に利用し、強力な励起光を用いて、信号光を増幅または他の波長帯へ変換する技術です。
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特徴:
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光パラメトリック増幅の機能を応用した波長帯一括変換技術を用いることで、信号の品質を維持しつつ、一つの波長帯(例: L帯)の信号を別の超長波長帯(例: NTTが新しく開拓したX帯など)へ一括で変換し、既存の増幅器と組み合わせて広帯域中継を可能にします。
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応用と将来の展望
超広帯域光増幅技術は、テラビット/秒を超える大容量光通信システムの実現に不可欠であり、主に以下の分野でその応用が期待されています。
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長距離・海底ケーブル通信: 伝送できる信号の波長数を大幅に増やすことで、国際的な大容量通信を支えます。
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メトロ・アクセスネットワーク: データセンター間の大容量接続や、将来の超高速インターネット網の基盤となります。
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新波長帯の開拓: 従来のC/L帯に加え、S帯、U帯、そしてさらに長波長側のX帯など、新しい通信波長帯の利用を可能にし、単一の光ファイバーで扱える情報量を飛躍的に増やします。
この技術は、AIやIoTの普及に伴う爆発的なデータトラフィック増加に対応するための、次世代光通信インフラ構築の核となっています。
Ceyear社ではLightwave Component Analyzer、Optical Spectrum Analyzerをラインナップしています。
2025年マイクロウェーブ展で展示されます。https://tm-co.co.jp/mwe2025/



