近傍界測定とは? ─ EMIノイズ源を特定するための簡易測定法

 

近傍界測定(Near-field Measurement / Near-field Scanning)とは、電子機器から発生する電磁ノイズを装置のごく近く(数mm〜数cmの距離)で観測する測定方法です。
主に、EMI(電磁妨害)対策の初期段階でノイズ源を特定し、効果的な対策を行うために活用されます。


✅ なぜ「近傍界」で測定するのか?

  • EMC測定の中でも放射ノイズ(EMI)の源を特定することは非常に重要

  • 電源ラインやクロック回路、筐体、ケーブルなど局所的にノイズが強く出る部位を把握することで、
    対策部品の配置や回路修正を効率的に実施できる


✅ 近傍界測定の主な用途

用途 説明
ノイズ源の特定 発生源となっているIC、ケーブル、パターンなどを特定
対策効果の確認 フィルタ、シールド処理の前後比較
開発段階での予備評価 本試験前に自社内で簡易評価可能

✅ 測定に使用する機器(基本構成)

機器名 機能
近傍界プローブ 電界(E)/磁界(H)を局所的に検出するセンサー
スペクトラムアナライザ 検出されたノイズの周波数と強度を表示
プリアンプ(任意) 微弱信号の測定感度を上げる補助機器

※プローブは複数種類あり、用途によって「E面用」「H面用」「高周波用」などを使い分けます。


✅ 測定の流れ(例)

  1. 測定対象機器を動作状態にする

  2. プローブを装置表面に沿ってゆっくりスキャン

  3. アナライザでノイズ強度と周波数を確認

  4. ノイズのピーク位置と発生部品を突き止める

  5. フィルタやシールドなどの対策を施し、再測定で効果を確認


✅ 注意点・限界

  • 近傍界測定は正式なEMC認証試験ではありません
     → あくまで開発時の事前評価やノイズ源分析が目的

  • 絶対値(dBμVなど)の精密な評価ではなく、相対的な変化の比較が中心


まとめ

  • 近傍界測定は、ノイズ対策の出発点となる重要な技術

  • 簡単な機材構成でも、**ノイズ発生箇所の「見える化」**が可能

  • EMC対策コストや開発時間の削減につながる、実践的な測定手法