酸化膜厚を測定する方法は、対象の膜の厚さや材質、必要な精度によってさまざまな種類があります。主に非接触接触の2つの方法に分類され、それぞれ異なる原理に基づいて測定が行われます。

 

非接触測定方法

 

非接触法は、試料を傷つけることなく測定できるため、製品の品質管理や研究開発で広く用いられます。

    • エリプソメトリー(分光エリプソメトリー) 非接触で高精度な測定が可能な代表的な方法です。試料に特定の偏光状態の光を照射し、反射光の偏光状態の変化(振幅比と位相差)を測定することで、膜厚や屈折率を算出します。

      • 原理: 膜の表面と基板の表面で反射した光が干渉する現象を利用します。この干渉による偏光の変化は膜厚に依存するため、この変化を解析することで膜厚を求めることができます。

      • 特徴: 極薄膜(ナノメートルオーダー)の測定に非常に優れており、半導体製造プロセスにおけるシリコン酸化膜の膜厚管理に多用されます。測定時間が短いという利点もあります。

    • 光干渉式膜厚測定 試料に光を照射し、膜表面からの反射光と基板表面からの反射光の干渉を利用して膜厚を測定します。

      • 原理: 異なる経路をたどった光が干渉し、特定の波長の光が強められたり弱められたりする現象(干渉色)を分析します。この干渉パターンの波長から膜厚を計算します。

      • 特徴: 透明な膜の測定に適しており、広範囲の膜厚を非接触で測定できます。

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  • X線光電子分光法(XPS) 試料にX線を照射し、放出される光電子のエネルギーを分析することで、表面の元素組成や化学状態を評価する手法です。

    • 原理: 酸化物層と基板層からそれぞれ放出される光電子の強度比を測定し、その比率と光電子の平均自由行程(物質中を電子が散乱されずに進む距離)から膜厚を算出します。特に数ナノメートル以下の極薄膜の測定に有効です。

    • 特徴: 非破壊で測定でき、同時に表面の化学状態(酸化物か金属かなど)も分析できます。


 

接触および破壊測定方法

 

これらの方法は、試料を加工したり、直接プローブを接触させたりして測定するため、試料が製品として使用できなくなる場合があります。

  • 走査型電子顕微鏡(SEM)/透過型電子顕微鏡(TEM) 試料の断面を観察することで膜厚を直接測定します。

    • 原理: 試料を薄くスライスし、その断面を電子顕微鏡で拡大観察します。酸化膜と基板の境界を明確に捉えることで、視覚的に膜厚を測定します。

    • 特徴: 最も直接的で確実な方法ですが、試料の加工に高い技術が必要で、時間とコストがかかります。

  • 電解式膜厚計 試料を電解液に浸し、電気化学的に膜を溶解させます。

    • 原理: 膜が溶解するのにかかる時間と電流値から膜厚を計算します。

    • 特徴: 膜を破壊するため、製品の品質管理には向かず、サンプリング検査に用いられます。

測定方法 主な原理 適した膜厚 特徴
エリプソメトリー 光の偏光状態の変化 極薄膜(nmオーダー) 高精度、非接触、高速
光干渉式 光の干渉 透明膜、比較的厚い膜 非接触、高速
XPS 光電子の強度比 極薄膜(数nm以下) 非破壊、化学状態の分析も可能
SEM/TEM 断面観察 全ての膜厚 最も確実、破壊検査、高コスト
電解式 電気化学的溶解 全ての膜厚 破壊検査、膜を剥離して測定