電圧伝達関数(VTF: Voltage Transfer Function)測定は、主にUCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)規格におけるチップレット間相互接続の信号品質(シグナルインテグリティ)を評価するために用いられる、シミュレーションベースの規格準拠チェック手法です。
VTFは、伝送線路の特性を測定する従来のSパラメータ測定と異なり、送信機と受信機の終端回路の影響を統合して評価するため、実際の回路動作に即した損失とクロストークを算出できます。
🔬 VTF測定・計算のステップ
VTF測定は、物理的な測定ではなく、主に**EDA(Electronic Design Automation)**ツールを用いたシミュレーションによって行われます。
1. チャネルモデルの抽出
まず、チップレットを接続するパッケージ内配線(インターポーザ、ブリッジなど)のレイアウト情報から、電磁界(EM)シミュレーションを用いて相互接続チャネルのSパラメータ(散乱パラメータ)を抽出します。
2. VTF損失(VTF Loss)の計算
VTF損失は、送信機(Tx)の電圧に対する、受信機(Rx)で得られる電圧の比率を周波数関数として定義します。この計算には、抽出されたSパラメータに加えて、**規格で定められたTxとRxの終端回路の抵抗 (Rtx, Rrx) および容量成分 (Cpadなど)**が組み込まれます。
VTF損失L(f) の計算式は、周波数 f における送信電圧Vs(f) と受信電圧 Vr(f) の比率を対数で表したものです。
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評価: このVTF損失曲線が、特定のデータレートとパッケージタイプに対応するVTF損失マスクの上側(損失が小さい領域)にあることが合格条件となります。
3. VTFクロストーク(VTF Crosstalk)の計算
VTFクロストークは、複数のアグレッサー(ノイズ源となる信号線)から、対象となる信号線(被害者、ヴィクティム)に結合するノイズの総和として定義されます。
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要素: 19本のファーエンド・アグレッサー(遠端クロストーク)がノイズ源として含まれます。
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計算: 各アグレッサーとヴィクティム間の伝達関数(クロストーク)を計算し、それらを電力和として合計します。
VTFクロストーク XT(f) の計算式は以下の通りです(Va_i(f) は i 番目のアグレッサーの受信電圧):
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評価: このVTFクロストーク曲線が、規格のVTFクロストークマスクの下側(ノイズが少ない領域)にあることが合格条件となります。
4. 規格準拠の検証
最終的に、シミュレーションで得られたVTF損失曲線とVTFクロストーク曲線を、UCIe規格で定められたマスクと比較し、設計がシグナルインテグリティ要件を満たしているかを確認します。
Chiplet PHY Designer for Simulating D2D to D2D PHY IP Supporting the UCIe Standardのビデオでは、EDAツールを使用してUCIe準拠のためにVTFシミュレーションをセットアップし、その結果をマスクと比較する手順が示されています。
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