SIGLENT (シグレント)スペクトル&ベクトル・ネットワーク・アナライザ SVA1000Xシリーズ

電源フィルタのディレーティング特性とは、周囲温度が上昇するにつれて、安全に使用できる定格電流が低下する傾向を示す特性です。この特性をグラフ化したものをディレーティングカーブ(曲線)と呼びます。


 

ディレーティング特性の仕組み

 

電子部品は、電流が流れる際に発熱します。特に電源フィルタは、内部のインダクタやコンデンサが電流による損失(I²R損失など)で熱を持ちます。周囲温度が高い環境では、この発熱を効率的に放熱できなくなるため、部品自身の温度が過度に上昇する危険性があります。

過熱は部品の劣化を早め、最悪の場合、焼損や故障につながります。これを防ぐために、メーカーは周囲温度が一定値(例:50℃)を超えた場合、流せる電流の最大値を制限することを推奨しています。この電流を制限する割合がディレーティングです。

 

ディレーティングカーブの見方

 

ディレーティングカーブは、通常、横軸に周囲温度(℃)縦軸に定格電流に対する使用可能電流の割合(%)をとって表されます。

グラフを見ると、ある温度までは定格電流の100%を使用できますが、それを超えると右肩下がりになり、使用可能な電流の割合が減少していくことが分かります。例えば、60℃の環境で使用する場合、定格電流の80%までしか流せないといったように、安全に使える電流値が読み取れます。

 

⚡️重要なポイント

 

  • 周囲温度の影響: 電源フィルタの性能は、周囲温度に大きく左右されます。

  • 安全性の確保: ディレーティング特性を理解し、適切な電流値で使用することは、製品の信頼性と寿命を確保するために不可欠です。

  • 選定時の考慮: 高温環境で使用する際は、必要な電流値に対してディレーティング分を考慮し、より定格電流の大きい電源フィルタを選定する必要があります。

 

参考:この資料は、ディレーティング特性の一例です。

 

 

 

電源フィルタにおける接地コンデンサ(Yコンデンサ)の容量

 

電源フィルタにおける接地コンデンサ(Yコンデンサ)の容量が異なると、主にコモンモードノイズの減衰特性に影響します。

  • 容量が大きい場合: コモンモードノイズに対する減衰特性が向上します。これは、より多くの高周波ノイズ成分をグラウンド(接地)にバイパスできるためです。

  • 容量が小さい場合: コモンモードノイズの減衰効果は小さくなります。


 

トレードオフの関係

 

接地コンデンサの容量を大きくすると減衰特性は良くなりますが、同時に漏洩電流(リーク電流)が増加するというトレードオフの関係があります。

  • 漏洩電流: AC電源フィルタのYコンデンサには、常に商用周波数(50/60Hz)の電圧がかかっています。このコンデンサを経由してグラウンドに流れる微小な電流が漏洩電流です。

  • 漏洩電流の制限: 多くの国の安全規格(電気用品安全法など)では、機器からの漏洩電流に上限値が定められています。容量を大きくしすぎるとこの規格をクリアできなくなる可能性があるため、減衰特性と漏洩電流のバランスを考慮して適切な容量が選択されます。

接地コンデンサは、電源ラインと筐体グラウンドの間に接続され、電源ラインに乗っているコモンモードノイズ成分をグラウンドに流す役割を担っています。これにより、機器からのノイズ放射を抑制します。

 

減衰特性の測定には、TG(トラッキングジェネレータ)付きスペアナ、またはVNA(ベクトルネットワークアナライザ)を使用します。

  • SIGLENT SSA3000X Plus TG付きスペアナ  22万円~(税別)
  • SIGLENT SSA3000X-R  VNA付きリアルタイム・スペアナ 82万円~(税別)
  • SIGLENT SVA1000X    スペクトル&ベクトル・ネットワーク・アナライザ 26万円~(税別)