
飽和(ゲイン・コンプレッション)が発生しているかどうかをチェックする最も基本的な方法は、入力信号のレベルと出力信号のレベルの関係性を調べることです。
正常な状態では、入力信号のレベルを上げれば、それに比例して出力信号のレベルも上がります。しかし、機器が飽和し始めると、この比例関係が崩れ、入力信号を上げても出力信号の増加が鈍くなります。この現象をゲイン・コンプレッションと呼びます。
具体的なチェック方法としては、以下の2つが一般的です。
1. 入力レベルを徐々に下げる方法
最も簡単な方法は、出力の様子を観察しながら、入力信号のレベルを少しずつ下げていくことです。
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正常な状態: 入力信号を下げた分だけ、出力信号も下がります。
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飽和している状態: 飽和している場合は、入力信号を下げると出力信号が急に下がり始め、正常な状態に戻ります。
2. P1dB (1 dB ゲイン・コンプレッション・ポイント) を測定する方法
より厳密な評価には、P1dB(1 dB Gain Compression Point)という指標が用いられます。これは、入力信号を上げた結果、機器のゲインがリニアな状態から1 dB低下する時点の入力電力、または出力電力を指します。
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測定方法:
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まず、機器が飽和していない低レベルの入力信号で、ゲイン(入力と出力の比)を測定します。これが「リニアゲイン」です。
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次に、入力信号を徐々に上げていき、出力の変化を観察します。
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ゲインがリニアゲインから1 dB低下した時点の入力信号のレベルを「入力P1dB」、その時の出力信号のレベルを「出力P1dB」と呼びます。
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このP1dBを測定することで、その機器がどれくらいの入力レベルまでリニアに動作できるかを客観的に判断できます。
オーディオ分野でのチェック方法
オーディオミキシングの現場では、コンプレッサーの「ゲイン・リダクション(GR)メーター」やVUメーターが視覚的な判断に役立ちます。
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ゲイン・リダクション(GR)メーター: コンプレッサーがどれくらい信号を圧縮しているかを直接表示してくれるメーターです。これが大きく振れている場合は、コンプレッションが発生していることを示しています。
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VUメーター: 音量の平均レベルを表示するメーターです。コンプレッションをかけると、音量レベルの変動が少なくなり、VUメーターの振れがより一貫したものになります。
これらの方法を組み合わせて、機器の飽和状態をチェックし、適切なレベル設定を行うことが重要です。