高周波C–V測定(High-Frequency C–V)とは
~界面準位の影響を除いたMOS構造の静電容量特性評価法~
■ 定義
高周波C–V測定(High-Frequency Capacitance–Voltage Measurement)とは、MOSキャパシタや半導体構造体に対して数100kHz~1MHz程度の高周波AC信号を印加しながら、DCバイアス電圧を掃引して静電容量の変化を測定する手法です。
この測定法は、キャリアの捕獲・放出に時間を要する界面準位(Dit)を追従させないようにし、酸化膜容量(Cox)、しきい値電圧(Vth)、拡散深さ、ドーピングプロファイルなどの正確な抽出を可能にします。
■ 測定原理
MOS構造に高周波AC電圧(例:1 MHz)を印加することで、以下のようなバンド構造とキャリアの応答が観察されます:
バイアス領域 | キャリア挙動 | 容量変化 |
---|---|---|
蓄積領域 | 多数キャリアが界面に蓄積 | Coxに近い高容量 |
空乏領域 | キャリアが後退、空乏層が形成 | 容量が減少 |
反転領域 | 少数キャリアの生成が遅く応答せず | 低容量のまま保持(反転容量) |
※高周波下では、界面準位はAC信号に追従しないため、理想的なMOS挙動に近いC–Vカーブが得られます。
■ 測定目的と得られる情報
パラメータ | 意味 | 応用例 |
---|---|---|
Cox(酸化膜容量) | 酸化膜厚・誘電率評価 | 絶縁膜品質の確認 |
Vfb(平坦バンド電圧) | 酸化膜中の固定電荷量評価 | プロセスの安定性確認 |
Vth(しきい値電圧) | MOSFET動作開始電圧 | トランジスタ設計基準 |
ドーピング濃度分布 | 1/C² vs Vより逆算 | 拡散プロファイル管理 |
■ 特徴とメリット
特徴 | 内容 |
---|---|
✅ 界面準位の影響を低減 | HFではトラップが応答できず、測定精度が向上 |
✅ 非破壊・高分解能 | 試料を傷つけずに高感度で測定可能 |
✅ 解析モデルとの整合性が高い | 理論C–V曲線との比較が容易 |
■ 測定例(C–V曲線)
典型的な高周波C–V測定では、以下のような曲線が得られます:
■ 測定上の注意点
項目 | 内容 |
---|---|
✅ 適切な周波数選定 | 通常1MHzが目安。試料により変化あり |
✅ AC信号振幅の管理 | 大きすぎると非線形応答の影響を受ける |
✅ 温度制御 | キャリア応答速度が温度依存 |
✅ プローブ接触の安定性 | 微小面積試料では特に重要 |
■ 他のC–V手法との比較
項目 | 高周波C–V | 低周波C–V | 光C–V |
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界面準位影響 | 小さい | 大きい | 条件依存 |
反転層応答 | 応答しない(理想曲線) | 応答する(準静的) | 励起依存 |
用途 | Cox, Vth, 拡散深さ | Dit抽出 | トラップ評価、材料研究 |
■ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 数100kHz~1MHzのAC信号を用いた静電容量–電圧測定手法 |
目的 | 酸化膜容量、しきい値電圧、ドーピングプロファイルなどの精密評価 |
利点 | 界面準位影響を低減、非破壊、高分解能 |
用途 | MOS構造評価、プロセスモニタリング、材料特性解析など |