SIGLENT(シグレント)SDS3000X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

1MW級のラック対応を目指した高電圧直流給電(HVDC: High-Voltage Direct Current)は、主にAIデータセンターにおける電力密度とエネルギー効率の劇的な向上を実現するために、極めて重要性が高まっています。

AIアクセラレータ(GPUなど)の高性能化により、1ラックあたりの消費電力が従来の 10 kW ~ 30 kW から 100 kW を超え、さらに将来的には**1 MW(1,000 kW)**に達すると予測されています。この巨大な電力を効率的に供給・管理するためには、従来の交流(AC)または低電圧直流(48 VDC)給電システムでは、物理的な限界に直面するためです。


 

HVDCの重要性が高まる主な理由

 

 

1. 導体損失の劇的な低減(銅線の過負荷回避)

 

これが $\text{HVDC}$ 導入の最も重要な理由です。

  • 電流の抑制: 電力 P は電圧 V と電流 I の積(P = V X I)であるため、電圧 V を高めることで、同じ電力を送るために必要な電流 I を大に減らすことができます。

  • 物理的限界の克服: 1 MW の電力を従来の 48 VDC で供給しようとすると、計算上、約 20,000 A(アンペア)以上の電流が必要になります。これに対応するためには、非常に太く重い銅製のバスバー(導体)が大量に必要となり、その重さが**数百kg**にも達し、コストと設置スペースの点で非現実的になります。

  • HVDCの優位性: 電圧を400 VDC800 VDC などに高めることで、必要な電流は 1/10 以下に抑制され、導体の太さと重量を許容範囲に収めることができます。

 

2. 電力変換効率の向上と発熱の抑制

 

  • 変換段の削減: 従来のデータセンターでは、商用交流電源を多数の変換ステップ(ACHVDC48 VDC12 VDC → チップ電圧)で最終的にチップが使う電圧まで下げていました。

  • HVDCによる簡素化: HVDC をラックの近くまで直接配電し、変換ステップを減らすことで、エンドツーエンドの電力変換効率を最大 3%  ~ 5% 向上させることができます。効率が上がると、電力損失が減り、発熱が抑制されます。

 

3. 計算密度と冷却効率の最大化

 

  • スペースの確保: 従来のシステムでは、電力供給ユニット(PSU)をサーバーラック内に搭載していました。 HVDC の採用により、AC/DC変換PSUをラック外の「サイドカー(専用電源ラック)」に分離できます。

  • IT負荷の最大化: これにより、サーバーラック内のスペースをコンピューティング(xPU)専用に充てることができ、ラックあたりの計算密度(IT負荷)が向上します。

  • 冷却との統合: 1 MW級のラックは、空冷では対応できず、**液冷(Liquid Cooling)**が必須です。 HVDCによる発熱抑制は、液冷システムの負荷を軽減し、システム全体の熱管理を容易にします。

 

4. EV サプライチェーンの活用

 

  • 400 VDC800 VDC といった電圧帯は、電気自動車(EV)業界で急速に標準化が進んでおり、コンポーネント(パワーデバイス、コネクタなど)のサプライチェーンが確立されています。データセンターがこの電圧帯を採用することで、コスト削減部品調達の安定化という恩恵を受けることができます。

 

 

 

 

 

この動画は、通常のパッシブプローブと光アイソレーション差動プローブの違いを比較し、正確に観測するために光アイソレーション差動プローブが必要であることを示しています。

MICSIG 光アイソレーション差動プローブ MOIPシリーズ

MICSIG 光アイソレーション差動プローブ MOIPシリーズ

https://tm-co.co.jp/products/micsig-moip/

・ 帯域幅: DC~100MHz/・・・/1GHz(6モデル)

・ 差動電圧: ~6250V

・ 同相電圧: 85kVpk

 

※MOIPプローブはBNCコネクタ接続により、お持ちのオシロスコープで使用可能です。