Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)において、**4096-QAM(4K-QAM)**は通信速度を底上げする中核技術ですが、同時にハードウェア(特にパワーアンプ)への要求を極限まで高める要因となっています。
その特徴と、なぜこれほどまでに「非線形性」が問題視されるのかを深掘りします。
1. 4096-QAMとは?
QAM(直交振幅変調)は、電波の「振幅(強さ)」と「位相(タイミング)」を組み合わせてデータを送る方式です。
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12ビットを一度に送信: Wi-Fi 6(1024-QAM)が1シンボルあたり10ビットだったのに対し、Wi-Fi 7は12ビットを送ります。
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20%の速度向上: 帯域幅が同じでも、変調方式を4096-QAMにするだけで伝送効率が20%アップします。
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超高密度な信号点: 4096個の点を縦横64×64のグリッドに配置するため、点と点の距離が極めて近くなります。
2. 「非線形PA」が4096-QAMを壊す理由
パワーアンプ(PA)に非線形な特性があると、4096-QAMの精密な信号は「形」が崩れ、受信側で判別不能になります。
① EVM(変調精度)の限界突破
Wi-Fi 7の規格では、4096-QAMを維持するために -38dB以下(実用上はさらに余裕を見て-40dB〜-45dB以上)という非常に低い**EVM(Error Vector Magnitude)**が求められます。
非線形PAは信号をわずかに歪ませるだけで、この厳しい許容誤差(EVM)を簡単に超えてしまいます。
② 信号の「圧縮」現象
PAに過大な入力を入れると、出力が頭打ちになる「飽和」が起こります。4096-QAMは振幅の差を細かく使い分けるため、アンプが非線形領域(飽和に近い領域)に入って振幅が圧縮されると、外側の信号点が内側に押し込まれ、隣の点と区別がつかなくなります。
③ 高いSNRの要求
4096-QAMはノイズに非常に弱く、高い**SNR(信号対雑音比)**を必要とします。
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1024-QAM:約35dBのSNRが必要
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4096-QAM:約38dB〜40dB以上のSNRが必要
アンプが非線形動作をすると「歪み成分」がノイズとして重なり、必要なSNRを確保できなくなります。
3. Wi-Fi 7 世代での設計アプローチ
非線形PAの影響を抑えつつ、4096-QAMを安定させるために以下の工夫がなされています。
| 対策 | 内容 |
| より深いバックオフ | アンプの最大出力から数dB下げて(余裕を持って)運用し、線形性が高い領域のみを使用する。 |
| 高度なDPD補正 | デジタル処理でPAの非線形な「クセ」をリアルタイムに予測し、送信前に逆方向に歪ませてキャンセルする。 |
| 6GHz帯の活用 | 比較的クリーンな6GHz帯を利用することで、外部ノイズの影響を減らし、QAMの判定精度を助ける。 |
結論
4096-QAMは、いわば**「超精密な視力検査」**のようなものです。アンプが少しでも「非線形(乱視やボヤけ)」であれば、せっかくの12ビット通信は成立せず、システムは自動的に古い規格(1024-QAMや256-QAM)へランクダウンしてしまいます。
この4096-QAMを実現するためのDPD(デジタル・プリディストーション)の補正アルゴリズムや、実際の通信距離(カバレッジ)への影響について、さらに詳しく解説しましょうか?
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