
5Gアドバンスドの成層圏基地局。高度約20kmの成層圏に配置される「HAPS(High Altitude Platform Station)」という無人航空機などに搭載された通信基地局のことです。これは、地上の基地局ではカバーしきれないエリアの通信を補完する役割を担い、特に災害時や離島・へき地での通信確保に貢献することが期待されています。5Gアドバンスドは、この成層圏基地局(HAPS)のような**非地上系ネットワーク(NTN)**を5Gネットワークの一部として統合していくことを目指しています。
成層圏基地局の仕組みと特徴
成層圏基地局は、地上から約20km上空の成層圏を飛行する無人航空機(飛行船型や飛行機型)に搭載されます。成層圏は風が穏やかなため、比較的安定した位置を維持しやすくなっています。
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広範囲の通信エリア: 1つの成層圏基地局で、直径100〜200kmという非常に広い範囲をカバーできます。これは地上の基地局の約25倍に相当します。
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地上との連携: 地上の基地局と連携することで、地上の通信が途切れた際のバックアップや、離島、海上、山間部などの通信困難地域の通信を確保します。
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通信の安定性: 地上から近い位置にあるため、人工衛星よりも通信距離が短く、低遅延で安定した通信を提供できます。
5Gアドバンスドとの関連性
5Gアドバンスドは、5Gをさらに進化させた規格で、次の世代の通信規格である6Gへの「橋渡し」となるものです。5Gアドバンスドは、これまでの5Gが提供してきた「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」という特性をさらに発展させるとともに、非地上系ネットワーク(NTN)の統合などを実現します。これにより、成層圏基地局は5Gアドバンスドの主要な機能の一つとして組み込まれ、地上と空をシームレスにつなぐユビキタスな通信環境の構築を目指します。
成層圏基地局のメリットと課題
メリット
✅ 通信エリアの拡大: 地上の通信網が整備されていない地域(離島、海上、山間部など)でも、広範囲にわたる通信を提供できます。
✅ 災害時の強靭化: 地上の基地局が被災した場合でも、成層圏基地局が緊急で通信を確保し、安否確認や救援活動に貢献します。
✅ 低遅延: 人工衛星と比較して、高度が低いため、通信遅延が小さく、リアルタイム性が求められる用途にも適しています。
課題
⚠️ 技術的な難易度: 航空機を長期間、安定して成層圏に滞空させる技術(バッテリー、太陽光発電、モーターなど)や、地上の端末と正確に通信する技術(ビーム追跡技術)の開発が求められます。
⚠️ コスト: 基地局の製造、打ち上げ、維持管理にかかるコストが高い点が課題です。
⚠️ 電波干渉: 地上の基地局と同じ周波数帯を使用する場合、電波干渉を避けるための技術が必要です。
現在、日本でもソフトバンクやNTTドコモなどが成層圏基地局の実証実験を進めており、2026年以降の商用化を目指す動きが出てきています。
HAPSと5Gアドバンスドの周波数帯
HAPSが利用する周波数帯は、主に国際電気通信連合(ITU)の世界無線通信会議(WRC)で決定されます。これは、地球上どこでも利用できるグローバルな周波数帯の確保を目指しているためです。
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WRC-19で特定された周波数帯:(Ka-Band, V-Band)
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31-31.3 GHz
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38-39.5 GHz
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47.2-47.5 GHz
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47.9-48.2 GHz
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HAPSの固定通信サービス(地上局との通信)向けに指定された周波数帯:
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2 GHz帯
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6 GHz帯
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27/31 GHz帯
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47/48 GHz帯
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これらの周波数帯は、地上通信の周波数帯と比べて伝搬特性が異なるため、HAPSの特性を活かした広域な通信エリアの確保に適しています。特にミリ波(mmWave)帯は、5Gアドバンスドの高速・大容量通信を実現するために重要な役割を果たします。
5GアドバンスドにおけるHAPSの役割
HAPSは5Gアドバンスドの重要な構成要素であり、以下のような役割を担います。
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広域カバー: 離島や山岳地帯、海上など、地上の基地局ではカバーしにくいエリアに通信サービスを提供します。
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災害対策: 地上の通信インフラが被害を受けた際に、代替の基地局として機能し、通信を確保します。
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低遅延通信: 衛星通信に比べて高度が低いため、信号の遅延が少なく、リアルタイム性の高い通信が可能です。
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