
5Gインフラシェアリングの現状は、特に日本では、5Gの全国展開の加速とコスト削減の切り札として、急速に市場が拡大・多様化しています。
政府の後押しもあり、キャリア(MNO)間の協力だけでなく、独立系インフラシェアリング事業者(タワーカンパニー)が主導する形で、整備が進んでいます。
1. 5Gインフラシェアリングの現状(日本)
A. 市場の拡大と重要性の高まり
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5G普及の課題解決: 5Gは高い周波数帯を使用するため、4Gよりも多くの基地局が必要となり、各キャリアが独自に整備すると膨大なコストと時間がかかります。インフラシェアリングは、この課題を解決するための不可欠な仕組みとして位置づけられています。
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政府の推進: 総務省を中心に、5G/Beyond 5Gの普及は「Society 5.0」や「デジタル田園都市国家構想」の基盤として重要視され、インフラシェアリングが強力に推奨されています。
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人口カバー率の向上: 5G人口カバー率は着実に向上しており、インフラシェアリングが一翼を担っています。
B. 主なプレイヤーと事業モデルの多様化
日本のインフラシェアリング市場は、いくつかのモデルで展開されています。
事業モデル | 主なプレイヤー | 概要 |
独立系インフラシェアリング事業者 | JTOWER、Sharing Designなど | 鉄塔(タワー)やビル内のアンテナ設備などを保有・整備し、複数のキャリアに貸し出す(タワーシェアリング、屋内シェアリング)のが中心。 |
キャリア間の共同整備 | 5G JAPAN(ソフトバンクとKDDIの共同出資) | 主に地方(ルーラルエリア)において、基地局のアクティブインフラ(アンテナや無線機の一部)を共用する技術(MORANなど)を活用し、効率的なエリア拡大を図る。 |
不動産会社・施設管理者 | 三菱地所、東京国際フォーラムなど | オフィスビル、商業施設、空港、駅などにおいて、施設側が共用設備を導入し、キャリアの設備設置を一本化するケースが増加。 |
C. 実際の導入事例
特に都市部の屋内や地下、および地方の過疎地で積極的に導入されています。
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屋内シェアリング: 東京国際フォーラム、駅構内、大規模商業施設などで、JTOWERなどが複数のキャリアの通信を一本化して提供。
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地方・タワーシェアリング: NTTドコモなどから既存の鉄塔を譲り受け、これを他キャリアにも貸し出すことで、地方の5G整備を加速。
2. 課題と今後の展望
A. 課題
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サービスの差別化の難しさ: 共通のインフラを利用することで、通信の速度やつながりやすさといった品質面でのキャリア間の差別化が難しくなり、価格競争に陥りやすくなる懸念があります。
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障害発生時の対応: 共有設備で障害が発生した場合、関わる事業者が増えるため、原因究明や復旧に時間がかかる可能性があります。
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Beyond 5G(6G)への対応: 5Gに特化した共用インフラが、将来的なBeyond 5Gや6Gの新しい技術的要求にどこまで柔軟に対応できるかが、長期的な課題となります。
B. 今後の展望
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市場の拡大継続: 5Gカバレッジを完全な形で達成し、さらにネットワーク品質を向上させるため、インフラシェアリング市場は今後も長期的に拡大していく見通しです。
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ローカル5Gとの連携: 地域や企業が独自に5Gネットワークを構築する「ローカル5G」の分野においても、共有インフラの活用やノウハウの連携が進む可能性があります。
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多様なアセットの活用: 道路インフラ、信号機、街灯(スマートポール)など、多様な社会インフラを5Gの基地局設置場所として活用する動きがさらに加速すると見られます。