
920MHz帯空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムとは、920MHzの電波を使って離れた場所に電力を送る技術です。
これは、送電側から電波として電力を放射し、受電側でアンテナと整流回路(レクテナ)を使ってその電波を直流電力に変換する仕組みです。このシステムは、特に工場や介護施設など、広範囲にセンサーやIoTデバイスが設置されている場所での電力供給に適しています。
特徴と利点
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広範囲への伝送: 920MHz帯の電波は、他の周波数帯に比べて伝搬損失が少なく、建物の陰などでも電波が届きやすい特性を持っています。このため、比較的広い範囲にある機器へまとめて電力を供給することが可能です。
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低電力消費の機器向け: 主にセンサーネットワークやIoTデバイスといった、消費電力が非常に少ない機器(数μW~数mW)の電源として利用されます。
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安全性の確保: 送信出力が比較的低く設定されているため、人が存在する環境でも安全に利用できます。電波防護指針にも適合しており、人体への影響が考慮されています。
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バッテリーレス化の促進: 機器のバッテリーが不要になるため、バッテリー交換の手間やコストを削減できます。また、充電が難しい場所に設置された機器の電源としても有効です。
課題と今後の展望
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電力伝送効率: 電波として電力を送るため、距離が離れるほど受信できる電力は弱くなります。いかに効率よく電力を伝送し、受信側で変換するかが技術的な課題です。
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法整備: 日本では2022年の電波法関連省令改正により、この技術の実用化が進みました。今後、さらに利用範囲を広げるためには、法整備や技術基準の検討が継続して行われています。
920MHz帯のワイヤレス電力伝送は、社会のデジタル化を支えるインフラ技術として、今後も様々な分野での応用が期待されています。
参考:情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会(第93回)日時 令和7年8月6日
資料93-4-1 「920MHz 帯空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの屋外利用等に係る技術的条件」
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