
AESAレーダーは、多数の小型送受信モジュールで構成されたレーダーシステムです。アンテナ自体を機械的に動かすことなく、個々のモジュールの位相を電子的に制御することで、電波ビームの方向を瞬時に変えることができます。これにより、複数の目標を同時に追跡したり、様々なタスクを並行して実行したりすることが可能です。
仕組み
AESA(Active Electronically Scanned Array)は、アクティブ電子走査アレイと訳されます。従来のレーダーは、アンテナを物理的に回転させて広い範囲を探索していましたが、AESAレーダーは、アンテナの表面に敷き詰められたT/Rモジュール(送受信モジュール)と呼ばれる小さな部品が、それぞれ独立して電波の送受信を行います。
これにより、電波のビームを電気的に操作できるため、アンテナの向きを変えることなく、レーダーのビームを高速で広範囲に走査できます。これは、多くの人が同時に指揮を執るオーケストラのようなもので、各楽器(T/Rモジュール)が独自の役割を果たしながら、全体として協調して複雑な演奏(ビーム形成)をこなすイメージです。
メリットとデメリット
AESAレーダーは、従来のレーダーと比べて多くの利点を持っています。
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高速走査と多機能性: アンテナを動かす必要がないため、非常に高速にビームを走査でき、複数の目標を同時に追跡したり、捜索、追跡、電子戦といった複数のタスクを並行して実行できます。
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高い信頼性: 可動部品がないため、故障しにくく、メンテナンスの手間が少なくて済みます。また、一部のT/Rモジュールが故障しても、レーダー全体の機能が大きく損なわれることはありません。
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妨害への強さ: 複数の周波数で同時にビームを生成できるため、敵の妨害(ジャミング)を受けにくいという特徴があります。
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高解像度: 高速でビームを走査できることから、より詳細な情報を取得でき、目標の識別能力が向上します。
一方で、デメリットとしては製造コストが高い点が挙げられます。T/Rモジュールを多数使用するため、従来のレーダーに比べて製造コストが非常に高くなります。そのため、主に最新鋭の戦闘機やイージス艦などに搭載されています。
関連:
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このレーダーの主な特徴は以下の通りです。
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小型化の成功: これまでのAESAレーダーは大型で、戦闘機など特定の機体にしか搭載できませんでしたが、ファントムストライクは窒化ガリウム技術などを活用することで、大幅な小型化に成功しました。
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汎用性の高さ: 小型化されたことで、ドローンや軽戦闘機、練習機など、比較的小さな機体にも搭載することが可能になりました。これにより、さまざまなプラットフォームでの運用が期待されています。
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高い性能: 小型化されながらも、F-16戦闘機に搭載されるような大型のレーダーと同等の能力を発揮できるとされています。長距離での脅威探知、追跡、ターゲティングが可能です。
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空冷式: 完全に空冷で動作するため、システムの複雑さが軽減され、整備性や信頼性が向上しています。
ファントムストライクは、特に軽戦闘機市場や、将来的に無人機での運用が広がるであろう市場での需要が見込まれています。
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