
ARIB STD-T113とは、一般社団法人電波産業会(ARIB)が策定した、ワイヤレス電力伝送システムに関する標準規格です。この規格は、無線で迅速かつ容易な充電を可能にするシステムの技術的要件を定めています。
この規格には、主に以下の2つの方式が規定されています。
🔋 磁界結合ワイヤレス電力伝送システム(6.78MHz帯)
これは、コイルとコイルの間に発生する磁界を利用して電力を伝送する方式です。国際的な業界団体であるAlliance for Wireless Power (A4WP)の技術仕様が採用されています。モバイル機器の充電など、比較的近距離での給電に適しています。
🔌 電界結合ワイヤレス電力伝送システム(400kHz帯)
これは、電極と電極の間に発生する電界を利用して電力を伝送する方式です。磁界結合方式とは異なり、水平方向の位置ずれに強いという特徴があります。
💡 補足情報
1)ARIB STD-T113で規定されているこれらのシステムは、電波法で定められている高周波利用設備のうち、許可を必要としない高周波出力値(50W以下)で運用されることを想定しています。これにより、ユーザーは特別な手続きなしでワイヤレス充電を利用できます。
ワイヤレス電力伝送技術は、電線を使わずに電力を送る技術の総称です。この技術は、充電の手間をなくし、防水性能を高めるなど、生活の利便性を向上させる可能性を秘めています。
2)Alliance for Wireless Power(A4WP)技術仕様は、磁界共鳴方式を用いたワイヤレス電力伝送の国際的な標準規格です。この技術は、Rezence(レゼンス)というブランド名で知られています。
Rezence(レゼンス)技術の主要な特徴
Rezenceは、従来の電磁誘導方式(Qiなど)と比べて、いくつかの大きな利点があります。
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充電距離の柔軟性:電磁誘導方式が充電器に機器をぴったりと置く必要があるのに対し、磁界共鳴方式は数センチメートル離れていても充電が可能です。これにより、デスクの天板の下に充電パッドを設置し、天板越しにスマートフォンを充電するといった使い方ができます。
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複数機器の同時充電:1つの充電器で複数の機器を同時に充電できます。
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充電位置の自由度:充電器上のどこに機器を置いても充電できるため、位置合わせの必要がありません。
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周波数:6.78MHz帯の周波数を利用して電力伝送を行います。
標準規格の変遷
A4WPは、2012年にクアルコムやサムスン電子などによって設立されました。その後、Power Matters Alliance(PMA)と合併し、現在はAirFuel Allianceとして活動しています。この統合により、A4WPの磁界共鳴方式とPMAの電磁誘導方式の両方をカバーする新しい規格が策定されました。
Rezenceの規格には、主に以下の2つのバージョンがありました。
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BSS Ver1.2:携帯電話向けで、3.5W/6.5Wの充電に対応していました。
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BSS Ver1.3:ノートPCなど向けで、最大30Wまでの充電に対応していました。
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