C–Vプロファイリング(C–V Profiling)とは

~半導体中のドーピング分布や拡散深さを非破壊で評価する解析技術~


■ 定義

**C–Vプロファイリング(Capacitance–Voltage Profiling)**とは、半導体デバイスや構造体において、C–V測定(静電容量–電圧特性)データを用いて、空乏層の広がりやドーピング濃度分布などの深さ方向の情報を導出する技術です。
この手法は、MOSキャパシタ、pn接合、パワーデバイスなどの設計評価やプロセス管理において不可欠な解析手段の一つです。


■ 基本原理

逆バイアスを印加した際、空乏層の厚み WW は電圧 VV によって変化し、それに伴い静電容量 CC も変化します。
C–Vプロファイリングでは、この関係式を用いてドーピング濃度 N(x)N(x) を次の式で算出します:

N(W)=−2q⋅εs⋅A2(d(1/C2)dV)−1N(W) = -\frac{2}{q \cdot \varepsilon_s \cdot A^2} \left( \frac{d(1/C^2)}{dV} \right)^{-1}

  • qq:電子の電荷

  • εs\varepsilon_s:半導体の誘電率

  • AA:デバイスの有効面積

  • CC:静電容量

  • WW:空乏層の深さ


■ 測定の流れ

  1. C–V測定の実施(バイアス掃引に対して容量を取得)

  2. 1/C²–Vプロットの作成(傾きがドーピングに対応)

  3. 微分処理と深さ換算により、深さ方向のドーピング分布を導出

  4. ドーピングプロファイルグラフの出力(例:n型 → 降下カーブ)


■ 抽出できるパラメータ

パラメータ 説明
拡散深さ 空乏層の最大到達深さにより判断
ピークドーピング濃度 拡散ピークやイオン注入の最表層濃度
pn接合位置 n型–p型の境界判定
再分布領域の傾斜 拡散・熱処理のプロセス品質評価
プロファイルの対称性 イオン注入やエッチングの左右差確認

■ 応用例

分野 活用内容
✅ パワーデバイス開発 SiC/GaN-MOSFETのチャネル下部ドーピング分布評価
✅ 半導体プロセス管理 拡散・注入工程のプロファイル確認(n+/p-など)
✅ 研究開発用途 新材料(Ga2O3, Ge等)の空乏層制御解析
✅ 製品信頼性解析 長期バイアスストレスによる変化観察

■ 測定例(1/C²–Vプロットとドーピングプロファイル)

[左:1/C²–Vプロット]

lua
1/C² ↑ | / | / | / +----------------→ バイアス電圧(V)

[右:ドーピングプロファイル]

lua
N(x) ↑ | ╭─── ピーク濃度 | / | / |/ +----------------→ 深さ(W)

■ 注意点

項目 内容
✅ 測定周波数選定 HF測定で界面準位の影響を除去
✅ 有効面積の把握 精度に影響(プローブ接触含む)
✅ 解析モデルの適用範囲 単極構造での使用が前提
✅ ノイズ対策 微小容量測定では外部干渉が影響

■ まとめ

項目 内容
定義 C–Vデータからドーピング濃度や空乏層深さを抽出する解析手法
測定構成 CVU+DCバイアス+プローブ+解析ソフト
主な用途 パワーデバイス設計、プロセスモニタリング、材料開発
利点 非破壊、深さ方向の情報取得、高分解能解析