CAN通信とは?
― 車載ネットワークに欠かせない信頼性の高い通信方式 ―
CAN(Controller Area Network)通信とは、複数の電子制御ユニット(ECU)やマイコン間で情報をやり取りするためのシリアル通信プロトコルです。
もともとは自動車分野向けに開発されましたが、現在では産業機器や医療機器、ロボットなどにも幅広く利用されています。
🔧 基本概要
項目 | 内容 |
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略称 | CAN(Controller Area Network) |
通信方式 | マルチマスタ・バス型(2本の差動信号線を使用) |
規格 | ISO 11898シリーズ |
最大通信速度 | 通常1Mbps(CAN FDでは8Mbps以上も可能) |
伝送距離 | 数メートル~数百メートル(速度により変動) |
開発元 | Robert Bosch GmbH(ドイツ、1980年代) |
🚗 CAN通信の特徴
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高い信頼性
→ エラーチェック(CRC)や再送制御、バス障害検出などの機能が充実 -
マルチマスタ型ネットワーク
→ どのノードも通信を開始可能。優先順位はIDで自動制御される -
リアルタイム性が高い
→ IDにより優先度制御(優先度の高いメッセージが先に通過) -
ノード数が多くても安定通信
→ 最大約110台程度のノードが接続可能(実際は設計次第)
🧩 仕組みと構成
CAN通信は、2本の差動信号線(CAN_H、CAN_L)を使って通信します。
差動伝送により、ノイズに強く、長距離でも信頼性の高いデータ伝送が可能です。
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メッセージ単位の通信(アドレスではなくIDで管理)
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ノンブロッキング型通信(衝突時は自動リトライ)
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イベントドリブン方式(必要なときだけ送信)
🛠 よく使われるCANの種類
規格 | 特徴 | 用途例 |
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Classical CAN | 最も基本的な形式(最大8バイト/フレーム) | 自動車、産業機器 |
CAN FD | 拡張版。高速+最大64バイト/フレーム | 次世代車載通信、IoTシステム |
CANopen | CANを上位プロトコルで抽象化したもの | 産業用ネットワーク、PLC制御等 |
DeviceNet | Rockwell社ベースの産業機器向けCAN | ロボットアーム、FA機器 |
🔍 CAN通信の活用例
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自動車制御:エンジン、ABS、パワステ、エアバッグ間の連携
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ロボット・FA:センサ・アクチュエータ間通信
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医療機器:検査装置やモニタのリアルタイム通信
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エネルギー分野:電池管理(BMS)やスマートインバータ通信
📝 まとめ
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CAN通信は、高信頼・高効率・リアルタイム性を兼ね備えた通信方式
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自動車だけでなく、多様な組込みシステムで活用されている
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ID制御、差動通信、エラーハンドリングなど、実用性に優れる
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高速化・多機能化のニーズに対応し、CAN FDやCANopenなどの発展形も存在