Ciss、Coss、Crss、Rgとは?
~MOSFETのスイッチング特性を左右する重要パラメータ~
■ Ciss(入力容量:Input Capacitance)
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定義:ゲート–ソース間とゲート–ドレイン間の容量の合算(Ciss = Cgs + Cgd)
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役割:ゲート駆動回路にとっての“見かけの容量”。Cissが大きいとスイッチングに必要なチャージ量(Qg)が増加し、ターンオン/オフ速度が低下します。
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測定方法:ドレイン–ソース間を短絡(Vds = 0)した状態で、ゲート–ソース間の容量を測定。
■ Coss(出力容量:Output Capacitance)
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定義:ドレイン–ソース間の容量(Coss = Cds + Cgd)
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役割:MOSFETがオフ状態のとき、ドレイン電圧の変動に応じて蓄積される電荷量を決定。スイッチング損失(特にターンオン時)やノイズ発生に影響します。
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測定方法:ゲート–ソースを短絡(Vgs = 0)して、ドレイン–ソース間の容量を測定。
■ Crss(帰還容量 / 逆帰還容量:Reverse Transfer Capacitance)
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定義:ゲート–ドレイン間の容量(Crss = Cgd)
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役割:ミラー効果(Miller Effect)の原因となる容量で、ターンオン中にドレイン電圧が変化するとゲート電圧にも影響を及ぼす。スイッチング遅延時間の主要因です。
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測定方法:ゲート–ソース間をオープン(Vgs = 0)、ドレイン–ソース間にDCバイアスを印加して測定。
■ Rg(ゲート抵抗:Gate Resistance)
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定義:MOSFET内部に存在するゲート抵抗(パッケージや構造由来)
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役割:ゲート充放電の時間定数を決定し、スイッチング速度・発熱・振動(リンギング)に影響を与える。外部ゲート抵抗と合わせて設計最適化が必要。
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測定方法:高周波インピーダンス法やデータシート記載値を用いる。外付けRgとの合成で評価することが多い。
■ まとめ(用途別の影響)
パラメータ | 主な影響対象 | 小さいほど有利な理由 |
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Ciss | ゲート駆動回路設計 | 駆動電力が小さくなる、応答が速い |
Coss | スイッチング損失、EMI | ドレイン電圧変化時の電荷量が小さくなる |
Crss | ミラー効果、ターンオン遅延 | ゲート制御が容易、タイミング制御しやすい |
Rg | スイッチング速度とノイズ | 発熱低減・リンギング抑制が可能 |
■ 測定に関する補足
これらのパラメータは、LCRメーターやC-V測定器では周波数可変で測定することも可能ですが、MOSFETやIGBTのような非線形デバイスの場合、電圧依存性が大きいため、データシートの動作条件と同一環境での測定が推奨されます。
T&Mコーポレーションでは、Ciss/Coss/Crssの周波数依存特性を測定できるLCRメーターやC-Vアナライザーの選定も対応可能です。