Class-Jアンプとドハティ増幅器(Doherty Amplifier)は、現代の無線通信、特に5Gや次世代の6Gシステムにおいて、電力効率(PAE)を大幅に向上させるために不可欠な増幅器のクラス・構成です。
これらは、増幅器の線形性(信号の歪みの少なさ)を保ちつつ、高い電力付加効率(PAE)を広い電力範囲で実現するために設計されています。
1. ドハティ増幅器(Doherty Amplifier)
ドハティ増幅器は、通信システムにおいて信号のピーク電力が発生する時にのみ高い効率を達成するという課題を解決するために考案された構成です。
特徴と動作原理
-
構成:
-
**キャリアアンプ(主増幅器)とピーキングアンプ(補助増幅器)**の2つ(またはそれ以上)のアンプで構成されます。
-
それぞれの入力と出力には、電力分配器と合成器、そして信号の位相を制御するための**移相器(インピーダンス変調器)**が組み込まれます。
-
-
動作:
-
低電力時: キャリアアンプのみが動作し、ピーキングアンプは停止しています。キャリアアンプは効率の高い状態で動作するように調整されます(例:Class-ABやClass-B)。
-
高電力時(ピーク時): 入力信号が一定のレベルを超えると、ピーキングアンプが動作を開始します。この補助アンプの電力が増幅された信号と合成され、システム全体の出力電力が増加します。
-
-
効率の向上:
-
通信信号は平均的に低い電力で送信されることが多いため、従来の単一アンプでは、多くの場合で低い効率しか得られませんでした。
-
ドハティ増幅器は、平均電力レベル(バックオフ領域)でもキャリアアンプを高い効率で動作させることができ、広いダイナミックレンジにわたって高いPAEを維持できます。
-
2. Class-J アンプ
Class-Jアンプは、Class-B/ABアンプの変種であり、出力整合回路の設計を工夫することで、広帯域で高効率を達成できるように最適化された増幅クラスです。
特徴と動作原理
-
原理:
-
Class-Jは、トランジスタのドレイン(出力端子)に現れる高調波(ハーモニクス)電圧を、特定のリアクティブな負荷インピーダンス(リアクタンス成分のみを持つ負荷)で終端します。
-
これは、Class-Fのように高調波を完全にショート/オープンするのではなく、柔軟なリアクティブ負荷を与えることで、広帯域にわたって高効率な動作波形を維持できるようにします。
-
-
広帯域性:
-
Class-Fは特定周波数の高調波終端に依存するため、周波数が変わると効率が急激に低下しやすいですが、Class-Jはリアクティブ負荷を利用することで、周波数変動に対してよりロバストな高効率動作を実現します。
-
-
応用:
-
広帯域が求められる5G/6Gの基地局やデバイスにおいて、高いPAEとマルチバンド対応を両立させる技術として、非常に注目されています。
-
まとめ:ドハティとClass-Jの関係
ドハティ増幅器は**「構成(アーキテクチャ)」であり、Class-Jは「動作クラス(トランジスタを駆動する方法)」**です。
両者はしばしば組み合わせて使われます。例えば、ドハティ増幅器のキャリアアンプとピーキングアンプの両方、または一方をClass-Jで動作させることで、**「広帯域にわたって高い効率」を「広い出力電力範囲」**で維持する、最も高性能なパワーアンプシステムが実現されます。
![]() |
SSG6M80Aシリーズ ・Coming soon
|
![]() |
![]() |
![]() |
SSA6000A Series Signal Analyzer Main Features ・Coming soon
|
![]() |
SNA6000A Series Vector Network Analyzer Key Features
|











