DCバイアスとは

~電子部品や回路に直流電圧を加える基本的かつ重要な技術~


■ 定義

DCバイアス(直流バイアス)とは、電子部品や回路に対して“意図的に加える直流電圧または電流”のことです。
交流信号(AC)の上に直流成分(DC)を重ねて加えることで、部品の動作点を設定したり、特性変化を評価したりする目的で使用されます。


■ なぜDCバイアスを加えるのか?

電子部品や回路は、印加される電圧や電流の条件によって特性が変化するため、実使用状態を模した評価が重要です。

主な目的:

  • ✅ MOSFETやトランジスタの動作点(Vgs, Vds)を設定する

  • ✅ コンデンサの容量変化(バイアス特性)を評価する

  • ✅ C-V特性測定における掃引電圧として用いる

  • ✅ LCRメーターやインピーダンスアナライザでの実使用模擬

  • ✅ センサー素子やMEMSの初期変位設定や感度確認


■ アプリケーション例

用途 DCバイアスの役割
MLCC評価 DCバイアス印加で容量低下特性(デラチュレーション)を測定
C-V測定 デバイスに掃引DCバイアスを加えて電気的特性(Vth、Coxなど)を取得
パワーデバイス評価 ゲートバイアス(Vgs)やドレインバイアス(Vds)でON/OFF特性を制御
誘電体・半導体材料評価 材料の非線形応答や静電誘導状態を観察

■ 測定器におけるDCバイアス機能とは?

多くのLCRメーター、C-V測定器、インピーダンスアナライザには、内部または外部DCバイアスを加える機能が搭載されています。

バイアス方式 内容
内蔵DCバイアス 測定器自体にDC印加回路を内蔵(±2 V、±5 Vなど)
外部DCバイアス 高電圧源(±100 V、±200 Vなど)を外部から印加(Bias-Tやバイアス端子使用)
スイープ機能 DCバイアスを0 V~指定範囲まで掃引しながら容量・インピーダンス変化を測定

■ 注意点

  • ⚠ 最大印加電圧/電流を超えないように機器・DUT仕様を確認

  • ⚠ DCブロック・バイアスTの有無や極性管理に注意

  • ⚠ 高バイアス印加時は漏れ電流や自己発熱による測定誤差に注意


■ まとめ

DCバイアスは、電子部品やデバイスの「実動作状態」を模して評価するための基本かつ不可欠な手段です。
特に高誘電MLCCやMOS構造、パワーデバイス、センサーデバイスでは、DCバイアス特性を正確に評価することで信頼性や動作特性の最適化が可能になります。

T&Mコーポレーションでは、DCバイアス機能を搭載した測定器(C-V測定器、LCRメーターなど)や、±100 V~±200 V対応のバイアスソリューションを幅広く取り揃えています。


ご希望であれば、DCバイアス印加時の測定例、容量-電圧特性グラフ、誤差要因の解説などを含む拡張資料(技術資料/プレゼン形式)もご提供可能です。ご指示いただければすぐに対応いたします。