高電圧半導体CV特性測定器 TECHMIZE TH51Xシリーズ

ダイヤモンド半導体は、その優れた特性から、人工衛星やロケットなどの航空・宇宙分野での利用に大きな期待が寄せられています。特に、過酷な宇宙空間の環境下で従来の半導体が抱える問題を解決できると考えられています。

 

宇宙空間での利用が期待される主な理由

 

宇宙空間は地球上と比べて100倍以上の放射線が存在するなど、半導体デバイスにとっては非常に過酷な環境です。ダイヤモンド半導体が宇宙で優位となる主な理由は以下の通りです。

 

1. 優れた耐放射線性

 

宇宙空間の高い放射線(宇宙線)は、従来のシリコン半導体などに劣化や誤作動を引き起こし、システムの信頼性を低下させる深刻な課題です。

  • 高い耐性: ダイヤモンドは炭素原子間の結合が非常に強力であるため、放射線に対して極めて高い耐性を持ち、シリコンの約1000倍とも言われています。

  • 信頼性の向上: これにより、人工衛星や探査機に搭載される精密機器の誤動作リスクを大幅に低減し、長期的な安定動作と信頼性の向上に貢献します。

 

2. 高い熱伝導率

 

宇宙空間は真空で空気による熱伝達や対流がないため、機器で発生した熱を効率よく逃がす(放熱する)ことが重要です。

  • 効率的な放熱: ダイヤモンドは半導体の中で最も高い熱伝導率を持つため、電子機器から発生した熱を素早く分散させ、デバイスの過熱を防止し、性能を最大限に引き出すことができます。

  • 小型・軽量化: 高い放熱性により、大型の冷却機構が不要になるため、機器の小型化・軽量化に繋がり、積載重量に制約がある宇宙機にとって大きな利点となります。

 

3. 高出力・高周波特性

 

通信衛星など、高周波・大電力が求められる用途での応用が期待されています。

  • 大電力制御: ダイヤモンドは絶縁破壊電界強度が非常に高いため、高電圧に耐えられ、高出力のパワーデバイスとして優れています。

  • 通信高速化: 高周波での動作も可能であるため、衛星通信向けのマイクロ波電力増幅デバイスとしての利用が研究されており、高効率高速な通信を実現する可能性を秘めています。これは、いまだに真空管が使われている領域を半導体で置き換えることを目指すものです。

 

具体的な応用分野

 

  • 宇宙通信向けデバイス: JAXAと国内の大学(特に早稲田大学)などが共同で、宇宙通信向けのマイクロ波電力増幅デバイスの開発に着手しており、超小型衛星などを活用した宇宙実証を目指しています。

  • 人工衛星・探査機: 人工衛星や宇宙探査機に搭載されるパワーエレクトロニクス(電力変換・制御)や、放射線センサートランジスタなどへの実装が期待されています。

  • 極限環境探査: 金星探査機など、高温環境下にさらされる探査機における窓材や、過酷な環境での観測機器での応用も期待されています。